2011 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエを用いたステロイドホルモン依存的な配偶子品質管理機構の研究
Publicly Offered Research
Project Area | Regulatory Mechanism of Gamete Stem Cells |
Project/Area Number |
23116701
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
丹羽 隆介 筑波大学, 生命環境系, 助教 (60507945)
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Keywords | 発生・分化 / 昆虫 / 生理学 / エクジソン |
Research Abstract |
研究代表者は、昆虫の主要なステロイドホルモンであるエクジソンが卵巣や精巣の配偶子発達の際の品質管理において必須の役割を担う可能性を検討するため、平成23年度は以下の研究を行った。 【生殖巣でのエクジソン生合成酵素遺伝子の発現解析】エクジソンは、食餌中に含まれるコレステロールを原材料として、複数段階の特異的な触媒反応を経て生合成される。成虫の生殖巣、特に卵巣はエクジソンの生合成の場の1つと考えられているが、エクジソン生合成を担う酵素の遺伝子発現には不明な点が多く残されていた。研究代表者は、RNA in situハイブリダイゼーション法と免疫組織化学法を併用して、既知のエクジソン生合成酵素7種の発現および局在について精査した。特にNeverland、Phantom、Disembodied、Shadow、そしてShadeというエクジソン生合成酵素が、卵巣の濾胞細胞で発達時期に応じて発現変動することを見出した。また、精巣における発現解析も同様に行い、NeverlandとShadeの発現が確認された。さらに、研究代表者は、新規エクジソン生合成酵素としてグルタチオンS-転移酵素に属するNoppera-boを同定し、この遺伝子が卵巣の濾胞細胞で発現することを記載した。 【エクジソン合成異常の生殖巣を持つ個体の作出と表現型解析】上述の解析で発現が認められたエクジソン生合成酵素について、体細胞組換え法およびRNAi法によって卵巣細胞での機能低下を試み、そしてその際の表現型観察を目指した。特に、卵巣周囲の体細胞で発現するneverland遺伝子の機能を成虫特異的に機能低下させる系を確立した。この個体における卵巣発達の状態を、配偶子幹細胞の分裂や卵の成熟化の表現型の解析を実施した。まだ明瞭な表現型を得るには至っていないが、研究を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の大きな目標であった、エクジソン生合成酵素の配偶子形成過程における網羅的な発現解析はほぼ終了させることが出来た。また、これも当初の計画どおり、遺伝子発現データを元にそれぞれの遺伝子の機能低下の際の表現型解析を実施し、特にneverland遺伝子の機能低下を安定的に実現する系を確立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
先述の通り、neverland遺伝子の機能低下の手法については目処が立ったが、その一方でその他のエクジソン生合成酵素についてはRNAiの効率の悪さや体細胞組換えの実施の際の技術的問題が十全に解決できていない。そこで残りの1年間については、neverland遺伝子の機能低下個体の解析を優先させ、配偶子形成過程における表現型解析に力を注ぐ。また、新規エクジソン生合成酵素であるNoppera-boの発現解析およびその機能をまとめた成果の論文化を急ぐ。
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