2011 Fiscal Year Annual Research Report
哺乳類の精細管内の基底区画でのGDNFの動態
Publicly Offered Research
Project Area | Regulatory Mechanism of Gamete Stem Cells |
Project/Area Number |
23116702
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
恒川 直樹 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (50431838)
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Keywords | 配偶子幹細胞 / ニッチ / GDNF / 哺乳類 / 季節繁殖 |
Research Abstract |
哺乳類では、雄にのみGSC(配偶子幹細胞)が存在し、セルトリ細胞が、主にGSCの維持するニッチ(微小環境)を形成する。これまでに申請者らは、周年繁殖動物であるマウスと、季節繁殖動物のハムスター精巣を用いてGDNFの可視化法を開発し、セルトリ細胞におけるGDNF発現解析を行った。その結果、ともに精子発生下では、精上皮周期に依存し、かつ分泌されたGDNFは、精細管の基底区画内に認められるセルトリ細胞の細胞間隙に集積することを明らかにしている。そこで本研究課題では、これらのGDNFの分布、発現解析をさらに発展させ、特に精細管の基底区画でのGDNFの局所的な分布の制御機序とGFRα1陽性細胞との相互作用について詳細に細胞生物学的解析を行うことを目的とした。これにより、精細管内の基底区画内でGDNFが何時、何処で、どのようにGSCと相互作用しているのかを明らかにする。また、哺乳類の精細管内の基底区画での普遍的なGDNFの分布動態の制御機序を明確化し、GSCの維持機構とそのニッチ形成の構造の基盤を明確にする。平成23年度は、マウスとハムスターの精細管に対してホールマウント二重染色を施し、詳細に解析を行った。その結果、両者共にGDNF陽性領域には、GFRα1陽性のGSCが多く認められ、GSCは細胞質突起を伸ばして存在することが観察された。続いて、精細胞を欠くW/Wvマウスの精細管に対して未成熟個体から採取されたGSC(CAG-GFPマウス由来)を移植し、GFPシグナルを指標にして、移植後1~3ヶ月の定着過程を追った。さらに定着部位周辺と非定着部位との間の比較を行った。ハムスターは、非繁殖条件での飼育を行い、不活性状態への導入から精子発生の再開までの期間の精巣を継時的に採取した。これらに対して、GFRα1抗体とGDNF抗体によるホールマウント二重染色にて、定量的な解析をすすめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ハムスターの飼育は非繁殖条件で行い、不活性状態への導入から精子発生の再開までの期間の精巣を継時的に採取する必要があるが、系統によって不活性状態への導入条件が異なる。残念なことに、これまでに実績のあった系統を利用することができなくなり、異なる系統を用いた必要が生じた。これが主たる遅延の要因ではあるが、それ以外は概ね順調で、次年度もスムーズな研究の実施が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
一部のGDNFパッチ状の集積とGFRα1陽性細胞(GSC)が密に相互作用している像が高頻度に認められる一方、大部分のGFRα1陽性細胞、GDNFの集積は各々単独で存在することを既に見出している。そこで、1)GDNF陰性/GDNF陽性領域の割合(Asingle,Apaired,Aahgnに分類)、2)細胞の形態計測の数値(細胞の長軸/短軸、突起の長さ等)を定量的にデータ化する。これらのデータを、ハムスターとマウス間において比較解析し、周年繁殖と季節繁殖におけるGDNF,GFRα1陽性細胞の普遍性と特殊性について明らかにする。これにより、哺乳類の精細管の基底区画でのGDNFの分布動態の制御機序を明確化し、GSCの維持機構とそのニッチ能の構造的な基盤を明確にする。
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Research Products
(3 results)