2011 Fiscal Year Annual Research Report
病態モデル細胞を用いたシグナル伝達破綻メカニズムの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Regulation of signal transduction by post-translational modifications and its pathogenic dysregulation |
Project/Area Number |
23117509
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加納 ふみ 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教 (10361594)
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Keywords | 病態モデル細胞 / セミインタクト細胞 / リシール細胞 / エンドサイトーシス / p38 MAPキナーゼ |
Research Abstract |
本研究ではセミインタクト細胞リシール法(可逆的形質膜穿孔法)を駆使して病態モデル細胞を構築し、病態環境下におけるシグナル伝達の撹乱機構を解明することを目的としている。まずプロトタイプとしてリシールHeLa細胞のセミインタクト(穿孔)化・リシール(再封入)化の条件検討を行った。最適化された条件の下で、細胞に糖尿病モデルマウスdb/dbマウス肝臓の細胞質を導入し、細胞内環境を糖尿病肝臓状態へと改変した。この細胞を糖尿病モデル細胞とし、コントロールの正常細胞(野生型肝臓細胞質導入細胞)とフェノタイプの差を比較検討した。特に形質膜のintegrityを検証する目的も含め、細胞内への物質取り込み過程エンドサイトーシスの3つの経路(1)トランスフェリンとその受容体複合体の形質膜→エンドソーム→形質膜へのリサイクリング経路、(2)コレラ毒素の形質膜→エンドソーム→ゴルジ体の逆行輸送、(3)EGF受容体の形質膜→エンドソーム→リソソームの分解経路を調べた。その結果、糖尿病モデル細胞ではコレラ毒素のゴルジ体への逆行輸送が遅延し、逆にEGF受容体の分解過程が早まっていることがわかった。EGF受容体分解の促進は、糖尿病モデル細胞におけるEGFシグナル伝達の規乱が起こりうることを示唆している。また、エンドソームに特異的に集積する脂質ホスファチジルイノシトールー3-ホスフェイトが糖尿病モデル細胞においてp38 MAPK依存的に消失していることもわかり、エンドサイトーシス過程撹乱の一因となる可能性が示唆された。以上の結果をまとめ、PLoS ONE誌に報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究ではセミインタクト細胞リシール技術を用いて病態環境下におけるシグナル伝達の撹乱機構を解明することを目的としている。ところがシグナル伝達解析を進めようとしたところ、セミインタクト・リシール処理により細胞ストレスが負荷されシグナル伝達に影響を与える可能性が出てきた。そこでストレス軽減の条件検討や評価を追加で行ったため、スケジュールが遅延することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに、細胞ストレスが軽減できる条件を見つけることができている。その条件を基に計画通り病態モデル細胞の構築とシグナル伝達撹乱を解析し、さらにマイクロアレイ解析から病態関連因子探索を行う。また、確立した病態モデル細胞アッセイ系を用いて、病態関連因子の機能解析も遂行する予定である。
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