2011 Fiscal Year Annual Research Report
体内時計因子の翻訳後修飾シグナルに基づく行動リズム制御とその異常
Publicly Offered Research
Project Area | Regulation of signal transduction by post-translational modifications and its pathogenic dysregulation |
Project/Area Number |
23117513
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
深田 吉孝 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (80165258)
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Keywords | サーカディアンリズム / 生物時計 / 時計タンパク質 / タンパク質リン酸化 / 転写調節 / JNK / E4BP4 / 光 |
Research Abstract |
Jnk3-KOマウスは、恒暗条件では野生型に比べて長い周期の活動リズムを示すことに加えて、恒明条件での光強度依存的な周期延長が見られないことを見出した。この結果を受け、JNKが概日時計の中枢因子であるBMAL1とCLOCKをリン酸化することを明らかにした。具体的には、細胞内のJNKが浸透圧刺激により活性化されると、BMAL1とCLOCKのリン酸化レベルが亢進することを見出し、試験管内での直接的なリン酸化を確認した。一方、JNKに対する阻害剤やRNAiによる機能阻害は、BMAL1のリン酸化レベルを低下させるとともに、細胞時計を長周期化することが判明した。つまり、JNKは外界の光情報をBMAL1-CLOCK複合体にリン酸化シグナルとして伝達することにより、概日時計の周期や位相を決定することを明らかにした(Yoshitane et al.,EMBO Rep.,inpress)。 このようなJNKシグナリングに加えて本研究では、E4BP4の修飾シグナルに着目した研究を展開した。これまでにE4bp4-KOマウスの行動リズムを詳細に解析し、E4BP4が明暗サイクルの位相変化に伴う時計位相の追随に重要な役割を果たす可能性を見出していた。そこで初年度にはまず、E4bp4-KOマウスをPER2::Lucマウス(時計タンパク質PER2がルシフェラーゼとの融合タンパク質として発現するノックインマウス)と交配して胎児線維芽細胞を樹立することにより、細胞発光リズムを測定する系を確立した。この実験系において、培地の酸性化などのE4BP4を誘導する刺激が細胞時計をリセットさせることを見出すとともに、E4bp4-KO由来の細胞においてはこの酸性化に伴う位相シフトが大きく抑制されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本計画課題は大きく分けて2つの研究テーマに焦点を絞り、時計タンパク質の翻訳後修飾の生理的役割を明らかにしようとするものである。このうち、第1の研究テーマであるJNKシグナリングについては、研究成果を原著論文として国際誌に発表することができた。さらに、第2の研究テーマであるE4BP4の機能解析では、E4bp4-KOマウスの新しい表現型を見出し、この知見をもとに現在、時計機構における転写因子E4BP4の作用メカニズムにメスを入れようとしている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通り、概日時計におけるE4BP4の機能を明らかにするとともに、E4bp4-KOマウスのトランスクリプトーム解析を通じて、時計機構におけるE4BP4タンパク質の新たな機能に迫りたい。謎の多いD-boxを介した分子時計の制御機構に突破口をもたらしたい。
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Research Products
(24 results)