2011 Fiscal Year Annual Research Report
炎症シグナルによるErbBチロシンキナーゼのSer/Thrリン酸化とがん悪性化
Publicly Offered Research
Project Area | Regulation of signal transduction by post-translational modifications and its pathogenic dysregulation |
Project/Area Number |
23117516
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
櫻井 宏明 富山大学, 大学院・医学薬学研究部(薬学), 教授 (00345571)
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Keywords | がん / 炎症 / シグナル伝達 / リン酸化 / EGFR / ErbB / TAK1 / 受容体 |
Research Abstract |
我々は、TNF-αによるEGFR受容体のThr-669およびSer-1046/1047のリン酸化が起こることを明らかにしてきた。今年度は、これらリン酸化の生理機能解析を進めた。 (1)EGFRエンドサイトーシスの制御機構の解析 TNF-αによってエンドサイトーシス関連分子の翻訳後修飾の可能性を検証した結果、EGFR pathway substrate (EPS15)のSer-796のリン酸化が誘導されることを見出した。このリン酸化は、p38によって制御されていること、リン酸化の経時変化がEGFRのSer-1046/1047リン酸化と極めてよく似ていることから、TNF-αによるEGFRエンドサイトーシスへの関与が示唆された。 (2)Thr-669リン酸化の生理機能解析 EGFRの非対称性二量体構造(機能的にレシーバーとアクチベーターに区別)において、両者ともThr-669のリン酸化を受けるものの、レシーバー側のリン酸化がEGFRチロシン自己リン酸化を負に制御していることが明らかになった。実際、ホルボールエステルによるThr-669リン酸化誘導が、EGFRチロシン自己リン酸化の抑制につながることを見出した。 (3)活性化変異EGFRを発現する肺がん細胞株におけるThr-669のリン酸化 EGFRチロシンキナーゼ阻害剤gefitinibの耐性機構において、HGFシグナルがThr-669のリン酸化を誘導することを明らかにしている。上記検討により、Thr-669リン酸化はEGFRチロシンキナーゼを負に制御していることが明らかになったことから、耐性に伴うThr-669のリン酸化の機能について検討した。 GefitinibでEGFRを阻害したのち、gefitinibを除去した場合の再活性化について検討した結果、Thr-669のリン酸化があるにもかかわらず、再活性化には影響を及ぼさなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EGFRのリン酸化の生理機能の解析については、エンドサイトーシスに関わるシグナルにおいてEPS15のリン酸化を見出した点がある。この新しいシグナル伝達経路の発見は、炎症に伴う受容体エンドサイトーシスに重要な役割を果たしている可能性があり、新しい発展が期待できる。一方、Thr-669の生理機能の解析についても、当初予定していたように進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的な全体計画はおおむね順調に進んでいる。したがって、当初設定した研究推進方策については大きく変更する必要はないと考えている。今年度の学内での異動に伴い研究体制の再構築に若干時間を要したが、すでに従前の体制となっていることから、来年度はさらに研究を進展したいと考えている。特に、ErbB受容体の新規リン酸化部位の同定など、新たな方向性を見出す研究に力を注ぎ、研究領域へ貢献したいと考えている。
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Research Products
(6 results)