Research Abstract |
近年,蛋白質リン酸化反応の検出技術は,癌などの分子標的薬のスクリーニング法として注目を集めている。よって,生体内のごく僅かな蛋白質リン酸化反応を網羅的にプロファイルできる,より特異的で,かつ,超高感度な分析技法の開発が急務である。申請者はリン酸基を特異的に捕捉する亜鉛錯体(フォスタグ)に1分子のビオチンを導入したリン酸基認識素子を既に開発している。本研究では,これを改変させることで,既存の機器や発光試薬を改良することなく検出感度を飛躍的に高めることを目指す。当該年度では,複数のビオチン分子を導入した新規誘導体の合成とその機能性の検証を試みた。以下に研究の成果を列記する。 1)新規誘導体の合成 本研究で新たに2分子,4分子のビオチンが導入されたフォスタグ誘導体を合成し,それぞれBTL-108,BTL-109と名付けた。さらには,ビオチン分子とフォスタグ間のスペーサー分子として,エチレングリコールが12分子繋がったPEG12を導入したBTL-111を合成した。合成した3種のビオチン化フォスタグを用いて,標品リン酸化タンパク質を試料としたウェスタン解析による比較検討を行った結果,スペーサーを長くしたBTL-111では,検出感度が有意に向上することが認められた。 2)ペプチドマイクロアレイチップ技術への応用 上記の新規誘導体をキナーゼプロファイリングを指向したペプチドマイクロアレイチップ技術に応用した。その結果,従来法では検出できなった細胞内蛋白質リン酸化反応が,長いスペーサー分子を導入したBTL-111により可能となった。 以上より,本アッセイ法が,複雑なリン酸化シグナルを短時間で一網打尽とするキナーゼ/ホスファターゼの活性プロファイリング法として,あるいはハイスループットなキナーゼ/ホスファターゼの阻害剤スクリーニング法として,今後大きく貢献できることを期待する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規フォスタグ誘導体を合成し,それが従来の誘導体と比較してより高感度なリン酸基認識プローブとして活用できることを見出した。さらには,ペプチドマイクロアレイチップ技術への応用も可能であることを証明した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,ティッシュアレイチップ等のラボオンチップ技術にも応用することで,簡便,かつ,高効率に蛋白質リン酸化反応を検出する新しいリン酸化プロテオミクスのためのアプリケーションに展開していく。
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