2011 Fiscal Year Annual Research Report
プロリン異性化酵素Pin1,PAR14標的蛋白の網羅的同定と病態への関与
Publicly Offered Research
Project Area | Regulation of signal transduction by post-translational modifications and its pathogenic dysregulation |
Project/Area Number |
23117523
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
浅野 知一郎 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (70242063)
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Keywords | プロリン異性化酵素 / シグナル伝達 / 代謝調節 / メタボリックシンドローム / Pin1 / PAR14 |
Research Abstract |
我々はインスリンシグナルにおいて中心的役割を果たしているIRS-1の結合蛋白を検索する過程で、代表的なプロリン異性化酵素であるPin1がIRS-1に結合することで、インスリンによるIRS-1のチロシンリン酸化からAkt活性化を顕著に亢進させることを見出した。さらに、Pin1の発現量が、高脂肪食を負荷したマウスの肝臓、筋肉、脂肪組織中で10倍近くも顕著に増加することを見出した。また、Pin1の結合タンパクを検索したところ、新規にCREBのco-activatorであるCRTC familyやTfgを同定した。CRTCに結合することで核内から細胞質へと移動させることで、CRE転写活性低下を導き、肝臓においては糖新生を抑制することを見出した。また脂肪分化に必須であることも判明した。同様に、肝臓にPin1を過剰発現させると、肝臓に脂肪蓄積が促進されることから、肝においても脂肪蓄積に重要な働きをしている。さらに、Pin1 KOマウスではコリン・メチオニン欠乏(MCD)による非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の発症も強く抑制される。現在まで、Pin1の発現量異常や遺伝子変異は、癌やアルツハイマー病、パーキンソン病などの発症に関与することが、Nature等の一流誌に報告されている。一方、これまで、Pin1が代謝調節に関係する報告はなく、我々が世界に先駆けて認識したことである。また、Pin1をKOすると類似蛋白であるPAR14の発現が上昇し、代償的役割を果たしている可能性が示唆された。そこで、Pin1とPAR14の両者について、臓器特異的なKOマウスを作成し、臓器ごとの役割を明らかにすると共に、両者に対する結合タンパクの同定を行っている。現在のところ、Pin1の臓器特異的なKOマウスの作成には成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Pin1及びPAR14の標的タンパクの網羅的同定に関しては現在、進行中であり、大きな問題はない。また、Pin1及びPAR14の臓器特異的KOマウスの作成については、Pin1については成功している。PAR14についてはES細胞のスクリーニング中であり、これも問題はない。
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Strategy for Future Research Activity |
同定されたPin1及びPAR14の標的タンパクについては、その生理的役割と共に疾患への関与について研究を進める。また、Pin1及びPAR14の臓器特異的KOマウスはdouble KOマウスを作成したりして、各臓器における役割を解明していく予定である。
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