2011 Fiscal Year Annual Research Report
酵母に見出した酸化ストレス下に生成する一酸化窒素の生理機能の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Signaling functions of reactive oxygen species |
Project/Area Number |
23117711
|
Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
高木 博史 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (50275088)
|
Keywords | 酵母 / 一酸化窒素 / 酸化ストレス / 活性酸素種 / ニトロソ化 |
Research Abstract |
研究代表者は、実験室酵母において高温培養や過酸化水素処理等の酸化ストレス下で、プロリンからアルギニン合成が亢進されること、増加したアルギニンからNOが生成し、細胞にストレス耐性を付与することを見出した。また、酵母のNO合成酵素(NOS)として、鉄硫黄クラスターへの電子の転移活性が報告されているTah18タンパク質を同定した。今年度は、NO合成に関与するTah18の特性を解析するとともに、NOの下流シグナル経路の解析を行った。また、実用パン酵母におけるNOの合成系およびその生理機能についても解析した。 まず、組換え酵素を用いて、Tah18のNOS活性に関するキネティクスを測定したところ、Tah18単独で哺乳類のNOSと同程度の値が得られた。次に、Tah18と相互作用するDre2タンパク質がNOS活性に及ぼす影響を調べたところ、Dre2の条件的破壊株では、細胞内のDre2発現量の減少に伴い、NOS活性が上昇することを見出した。これらの結果から、Dre2がTah18のNOS活性を負に制御している可能性が考えられた。 次に、非酵素的NOドナーで処理した細胞を用いてDNAマイクロアレイ解析を行った。その結果、銅代謝(還元、取込み、輸送)に関与する転写因子Mac1の制御下にある遺伝子群(CTR1,FRE1,FRE7等)の転写量が増加していた。また、NO処理後の細胞では、細胞内の銅含量や銅依存的superoxide dismutase(SOD)活性が有意に上昇していた。以上の結果から、NOがMac1の活性を制御し(ニトロソ化?)、銅依存的なSODの活性上昇を介して、酵母に酸化ストレス耐性を付与することが明らかになった。 さらに、プロリン・アルギニン代謝の鍵酵素(Pro1,Mpr1)の高機能型変異酵素を発現させることで、NO合成系を強化した実用パン酵母を作製し、製パンストレス下での発酵能を評価した。その結果、製パンストレス(乾燥、冷凍など)に応答して生成したNOが、ROSレベルの上昇を抑えることで、発酵力を向上させることが判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、酵母におけるNOの生理機能と下流シグナル経路の解明を目的に、1)ニトロソ化タンパク質の同定と抗酸化能との関連性解析 2)cGMPの検出とグアニル酸シクラーゼの探索 3)NO応答性の未知のシグナル伝達系や代謝系の解析を行なう。3)については、当初の計画をほぼ達成しており、科学的に価値の高い知見が数多く得られた。1)2)については、実験系の確立にメドが立ち始めており、今後の進展が期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)については、高温処理下におけるニトロソ化タンパク質の網羅的解析を行なう。具体的には、ビオチン・スイッチ法を用いてビオチン化したニトロソ化タンパク質をLC/MS/MSで同定し、ニトロソ化部位を決定する。 2)については、高温またはNO処理下における細胞内cGMP含量やGC活性をELISA法で測定する。次に、多くの細菌ではアデニル酸シクラーゼがGC活性も有しているため、酵母の同遺伝子欠損株を用いてGC活性を検討する。
|
Research Products
(9 results)