2011 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質S-グアニル化修飾による中枢神経細胞の保護と機能調節
Publicly Offered Research
Project Area | Signaling functions of reactive oxygen species |
Project/Area Number |
23117714
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
香月 博志 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (40240733)
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Keywords | 一酸化窒素 / 神経突起 / 細胞骨格 / ドパミン神経 / レチノイド / 翻訳後修飾 / チュブリン |
Research Abstract |
中枢神経系、特に中脳ドパミンニューロンにおけるレチノイド受容体(RAR)シグナル伝達機構として、NO/cGMPによって誘導されるタンパク質S-グアニル化修飾に着目し、神経細胞の機能や生存維持におけるその役割を明らかにすることを目指した。まずSH-SY5Y神経芽腫細胞において、RARアゴニストのAm80が神経型NO合成酵素の発現増大を伴ってβ3-チュブリンのS-グアニル化修飾レベルを増大させること、また同時にNO/cGMPシグナル依存的に神経突起の伸展および分岐形成を促すことを確認した。無細胞系のアッセイでは、S-グアニル化修飾はチュブリンの重合速度に影響を与えなかったが、SH-SY5Y細胞においてはRAR刺激後のβ3-チュブリンのS-グアニル化修飾に伴って重合型チュブリン量の増大およびチュブリンへのMAP1Bの連関が誘導されたことから、S-グアニル化修飾は重合型チュブリンを安定化させる働きがあることが示唆された。RAR刺激による神経突起形態の複雑化は、培養中脳-線条体組織切片において線条体組織内に伸展するドパミン神経線維にも認められた。この時、線条体において8-nitro-cGMPの産生とβ3-チュブリンのS-グアニル化修飾の増大も確認され、またNO/cGMPシグナルの阻害はドパミン神経線維の形態の複雑化を抑制した。初代培養中脳細胞では、ドパミン神経毒MPP+は重合化チュブリンを減少させたが、RARアゴニストAm80はこの減少を著明に抑制するとともに、MPP+によって誘導されるドパミンニューロン死を有意に抑制した。これらの結果から、RAR刺激によるドパミンニューロンの形態形成および生存維持において、NO/cGMPシグナル伝達系による重合型チュブリンの安定化が重要な役割を担うことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中枢神経細胞における主要なS-グアニル化修飾のターゲットと考えられるβ3-チュブリンについて集中的に検討を行い、そのS-グアニル化修飾が持つ生理的/病態生理学的意義の一端を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き神経細胞様細胞株や培養中脳-線条体組織切片を用いて、チュブリンのS-グアニル化修飾が細胞の形態形成や生存維持に及ぼす効果について、より多角的に検討を進める。また、S-グアニル化修飾のターゲットとなる他のタンパク質(特にミトコンドリア関連タンパク質)についても、その修飾とタンパク質機能との関係について検証する。
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Research Products
(28 results)