2011 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子改変マウスを利用したタンパク質チオール基化学修飾に基づく病態の検討
Publicly Offered Research
Project Area | Signaling functions of reactive oxygen species |
Project/Area Number |
23117716
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
石井 功 慶應義塾大学, 薬学部, 准教授 (90292953)
|
Keywords | 硫化水素 / ホモシステイン / レドックス / トランススルフレーション / イメージング / システイン / 肝炎 / 遺伝子改変 |
Research Abstract |
タンパク質Cys残基のチオールSH基は,周囲のレドックス環境に応じて形成・開裂するdisulfide結合を介してタンパク質の高次構造を決定するものと考えられている。しかし近年,NO付加によるS-nitrosylation,NO由来活性窒素酸化物により生成する8-nitro cGMP付加によるS-guanylation,H_2Sに由来するSH付加によるS-sulfhydration,さらにはメチオニン代謝物homocysteine付加によるS-homocysteinylationなど様々な化学修飾を受けることが明らかとなり,活性酸素あるいは生理活性ガス・アミノ酸シグナルの受容器(センサー)として働く可能性が浮上している。我々はCys生合成とH2_S産生の生理的意義を明らかにするため,その両者に必須のTranssulfuration酵素であるcystathionine beta-synthase(CBS)とcystathionine gamma-lyase(CSE)の遺伝子欠損マウスを作成・解析してきたが,共にホモシステイン血症を示すそれらのマウスに見られる病態がチオール基修飾による可能性を調べている。 本年度はまず,世界で初めてのH_2Sガス組織イメージングを行った。マウス腎臓切片を銀板状にスタンプしてH_2Sをトラップし,洗いの後にTOF-SIMSによりH_2Sに派生するAgS-あるいはAg2S-イオンを検出した。その結果H_2SはCBSとCSEが共発現する腎皮質に(腎髄質に比べ)強く分布することがわかった。また、高メチオニン食投与によりCSE欠損マウスで発症する急性肝炎の病態発症メカニズムの解析を行い、Transaminationによるアンモニアやメチルメルカプタンなどの「毒ガス」産生とシステイン由来抗酸化物質の産生低下の関与を見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
チオール基の化学修飾に基づく病態の解明には至っていないが、その病態モデルや解析手法における大きな進展が見られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
ランゲンドル灌流心を用いた実験から,絶食による虚血再灌流障害からの心機能保護作用に硫化水素とホモシステインの関与を示すデータを得ている。すなわち、硫化水素投与によっても保護作用は見えるが、高ホモシステイン血症を示すCBS欠損マウスもCSE欠損マウスも硫化水素投与による心機能保護作用が見えない。今後はこれらの作用に,タンパク質システインのSH基修飾が関わっている可能性を調べていく。
|