2011 Fiscal Year Annual Research Report
新たな酸化ストレス依存性経路の同定
Publicly Offered Research
Project Area | Signaling functions of reactive oxygen species |
Project/Area Number |
23117717
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
中野 裕康 順天堂大学, 医学部, 准教授 (70276476)
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Keywords | 酸化ストレス / アポトーシス / 代償性増殖 / アセトアミノフェン / 肝炎 / インターロイキンII |
Research Abstract |
酸化ストレスは様々な生体応答を誘導する事が明らかにされているものの、その全貌の解明には至っていない。また代償性性増殖と呼ばれ、アポトーシスに陥った細胞が様々な因子を分泌して周辺細胞の増殖を促進し、生体の恒常性を維持する現象の存在が注目されてきている。しかしながら、アポトーシスと酸化ストレスは密接に結びついている事が示されているものの、酸化ストレスと代償性増殖の関係は明らかとなっていない。我々は酸化ストレスにより発現誘導される新規遺伝子を網羅的にスクリーニングする過程で、IL-6ファミリーに属するIL-11が、酸化ストレス依存性に発現が誘導されることを見出した。IL-11の転写制御機構を解析した結果、ERK2依存性にFra-1のリン酸化が誘導され、その結果Fra-1のタンパクレベルが安定化し、蓄積したFra-1がIL-11遺伝子のプロモーターに会合し転写を活性化していることが明らかとなった。またIL-11をin vivoに投与することにより肝臓においてSTAT3の活性化とc-Mycの発現誘導が認められた。さらにアセトアミノフェン(APAP)誘導性肝障害マウスモデルを用いた解析から、IL-11は酸化ストレス依存性に肝細胞から産生・分泌されること、人工的に作製したIL-11受容体アゴニストを投与することにより、APAPによる肝障害が改善し、肝細胞の代償性増殖も亢進することが明らかとなった。逆に、IL-11Ra1欠損マウスでは、APAPによる肝障害が増悪し、代償性増殖の低下が認められた。以上より、酸化ストレス依存性に産生されるIL-11が代償性増殖に関与することが初めて明らかとなった。IL-11は胃がんや大腸がんなどで高発現していることが示されていることから、1L-11は酸化ストレスとがん化を仲介する一つの因子である可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
酸化ストレス依存性に誘導される因子として同定したインターロイキン11が、死細胞から放出される事、およびIL-11受容体アゴニスト投与により、アセトアミノフェン投与による肝炎が改善し、逆にIL-11受容体欠損マウスでは肝炎が増悪することを示した。この研究は酸化ストレスと代償性増殖とを連結する因子を初めて同定した研究であり、サイエンスシグナル誌の表紙に取り上げられ、さらに日本経済新聞および共同通信社の新聞記事に掲載され、広く我々の成果を国民にアピールすることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はIL-11産生細胞をin vivoで可視化するためのIL-11 reporter GFPマウスの作製(既に一匹のトランスジェニックマウスを得ている)と、様々なモデルを用いることで、死細胞から酸化ストレス依存性に産生されるIL-11の生体に置ける役割を明らかにする予定である。
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Research Products
(19 results)