2011 Fiscal Year Annual Research Report
mTOR複合体1を介した細胞分化制御機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular mechanisms of cell fate determination in the cells that undergo stepwise differentiation to multiple pathways |
Project/Area Number |
23118511
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
星居 孝之 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (20464042)
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Keywords | 細胞分化 / mTOR複合体1 / 造血細胞 |
Research Abstract |
本年度は、mTOR複合体1の構成分子であるRaptor、mTORと、mTOR複合体1の上流制御因子であるTSC1やRhebのコンディショナルノックアウトマウスを用いて、mTOR複合体1の活性と骨髄球系分化細胞の相関関係について解析を試みた。タモキシフェン誘導下でCreの機能を制御可能なRosa26-CreERT2マウスと交配し、成体造血における効果を評価した結果、Raptor,mTOR,Rhebが欠損し、mTOR複合体1の活性が低下した条件において共通した変化として、顆粒球細胞のマーカーであるGr-1を発現する細胞が減少することを見出した。一方で骨髄球前駆細胞は増加しており、mTOR複合体1シグナルは生体内での骨髄球分化の進行に重要であると考えられた。また、Raptor^<flox>マウスから得た骨髄細胞を用いた骨髄移植実験から、造血細胞の内在的なmTOR複合体1の活性が正常な骨髄球細胞分化に必須であることを明らかにした。興味深いことに、Raptor欠損造血幹細胞はin vitroでのコロニー形成能が著しく低下していたのに対し、Raptor欠損骨髄球系前駆細胞はコントロール群とほぼ同数のコロニーを形成した。以上の結果から、細胞の分化段階において増殖・分化に対するmTORC1への依存度が大きくことなることが示唆された。またMLL-AF9遺伝子導入による急性骨髄性白血病モデルにおいてRaptorを欠損させた場合においても、生体内において白血病細胞の分化が阻害されることを見出した。 以上の結果から、mTORC1は正常造血・白血病の両者において、骨髄球系細胞の運命決定に重要な因子であることが強く示唆された。本研究の進展は、多様な細胞外からのシグナルを統合するmTOR複合体1を介した、新たな細胞運命制御機構の解明に貢献することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
異なるmTOR活性制御因子のコンディショナルノックアウトマウスを用いた解析や、急性骨髄性白血病モデルから、in vivoでの細胞分化制御におけるmTORC1活性の機能評価を達成した。幹細胞・骨髄球系前駆細胞の培養から、分化段階におけるmTORC1依存性の違いを見出すことが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
mTORC1が骨髄球系細胞の分化におよぼす影響を評価するため、骨髄球系細胞分化に必要とされる転写因子の発現変動を網羅的・定量的に評価し、mTORC1が分化に作用するメカニズムの解明を目指す。またLysM-Creマウスなどの骨髄球系細胞特異的にCreを発現させることにより、より骨髄球分化の進行した段階におけるmTORC1の役割を明らかにする。さらにmTOR阻害剤が骨髄球細胞分化に与える効果を検証することにより、mTORC1機能を標的とした細胞分化制御・白血病治療の可能性について検討する。
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