2011 Fiscal Year Annual Research Report
胚発生過程における多能性造血細胞の分化方向決定機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular mechanisms of cell fate determination in the cells that undergo stepwise differentiation to multiple pathways |
Project/Area Number |
23118512
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
山根 利之 三重大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (30452220)
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Keywords | 造血発生 / 成体型造血 / 胎仔型造血 / 転写因子 / サイトカイン / 幹細胞 |
Research Abstract |
胚発生過程において血液細胞は卵黄嚢において初めて検出される。初期の卵黄嚢で発生する血液細胞のほとんどは胎生期に一過性に産生される胎仔型赤血球である。一方、リンパ球系譜とミエロイド系譜への分化能をもちあわせる成体型の多能性造血前駆細胞は、胎仔型赤血球の産生に少し遅れて大動脈周辺領域や卵黄嚢に見つかる。これまでこれらの血液細胞系譜の起源について多くは知られてなかったが、我々は、胎仔型赤血球と成体型多能性造血前駆細胞に共通前駆細胞が存在することを突き止めており、本年度は、胎仔型赤血球と成体型多能性造血前駆細胞の共通前駆細胞からそれぞれの系譜への分化方向の振り分け機構について、その分子機構を解明すべく、まずマイクロアレイ解析により、共通前駆細胞と多能性造血前駆細胞における発現遺伝子を比較した。その結果、中胚葉誘導に関わる転写因子群と血液細胞発生に必須な転写因子群の発現が共通前駆細胞から多能性造血前駆細胞への分化にともなって減少すること、また逆に造血幹細胞の形成・維持に関わる転写因子群の発現が共通前駆細胞から多能性造血前駆細胞への分化にともなって上昇することを明らかにした。現在これらの転写因子遺伝子の分化過程における分化方向振り分け機構への関与の有無を検討している。また共通前駆細胞では、限られたサイトカイン受容体のみ発現しており、多能性造血前駆細胞に分化した時点で多くの造血系サイトカイン受容体の発現することが確認できた。現在、共通前駆細胞に発現するサイトカイン受容体の分化機構における役割について、そのシグナル分子の機能とあわせて検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
発生段階に従って劇的に遺伝子発現が変化することを明らかにし、また細胞運命制御に関わる候補遺伝子群として、転写因子、シグナル伝達分子などを挙げることができ、おおむね実験計画通り進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今度、候補遺伝子を実際に共通前駆細胞へ導入し、また分子機能を阻害することで、細胞分化にどう影響するのか検討し、分化方向振り分け機構への寄与について精査する。また最初期の多能性造血前駆細胞は造血幹細胞と異なるB細胞サブセットへの分化傾向を示すことを突き止めているので、その分子機構についても今後の検討課題となる。
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