2011 Fiscal Year Annual Research Report
造血幹細胞から血液細胞へのケモカインシグナルによる系列決定機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular mechanisms of cell fate determination in the cells that undergo stepwise differentiation to multiple pathways |
Project/Area Number |
23118514
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉山 立樹 京都大学, 再生医科学研究所, 助教 (10456791)
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Keywords | 免疫学 / 発生・分化 / ケモカイン / 系列決定 |
Research Abstract |
全ての血液細胞は、成体骨髄で多能性造血幹細胞から生じた前駆細胞が、段階的に多分化能に制限を受け各細胞種に系列決定されて産生される。造血幹細胞からの分化はニッチと呼ばれる骨髄微小環境が精緻に制御していると考えられている。応募者らは、CXCL12-CXCR4ケモカインシグナルが、Bリンパ球や形質細胞様樹状細胞(pDC)などの血液細胞の発生や造血幹細胞の維持に必須であることを見出し、それらのニッチとしてケモカインCXCL12を高発現し長い突起を持つCXCL12高発現細網細胞(CAR細胞)を同定した。しかしながら、このケモカインシグナルがいかにして造血幹細胞から血液細胞への分化を制御しているかは不明である。そこで本研究では、CAR細胞の形成するニッチでの、CXCL12-CXCR4ケモカインシグナルによる多能性造血幹細胞から血液細胞への系列決定の制御を解明することを研究目標とする。 本年度は以下のような成果を得た。 1.血液細胞への系列決定におけるケモカインシグナルの役割 細胞表面抗原により分画化した様々な造血前駆細胞から、試験管内にてCXCL12を用いてBリンパ球を分化誘導し、Bリンパ球の系列決定におけるこのケモカインシグナルの標的細胞の候補を複数同定した。 2.造血幹細胞の多分化能におけるケモカインシグナルの役割 CXCL12floxマウスをC57BL/6系統にバッククロスし、遺伝子欠損を誘導できるMxCreマウスと掛け合わせMxCre-CXCL12floxマウスを作成した。 2.CAR細胞の血液細胞ニッチ機能の解明 定量的遺伝子発現解析を用いて、CAR細胞で高発現している造血に必須なサイトカインを複数同定した。さらにマルチプレックスビーズアレイシステムを用いて、これらサイトカインの骨髄造血環境における蛋白発現の定量解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ計画通りに研究が遂行でき、新たな知見が得られているため。
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Strategy for Future Research Activity |
1.血液細胞への系列決定におけるケモカインシグナルの役割。 初年度に引き続きBリンパ球やpDCなど各種血液細胞の最も初期の前駆細胞の同定を試みる。同定できれば、既に同定された前駆細胞を加え、CXCL12による作用を検討し、その標的前駆細胞を明らかにする。さらに、標的前駆細胞を用いて、系列決定を担うシグナル伝達経路の解明をはかる。 2.造血幹細胞の多分化能におけるケモカインシグナルの役割。 初年度に作製したMxCre-CXCL12floxマウスを用いて、成体においてCXCL12の遺伝子を欠損させ、遺伝子欠損効率を評価する。MxCre-CXCL12floxマウスで十分な遺伝子欠損が得られなければ、さらに各種Cre遺伝子組み換え酵素発現マウスと交配し、効率よくCXCL12遺伝子を欠損誘導できる条件を検討する。十分効率よくCXCL12遺伝子を欠損誘導したマウスが得られれば、この造血幹細胞を移植したマウスの末梢血再構築能をリンパ球系および骨髄球系の血球系列ごとに解析し、CXCL12遺伝子欠損による造血幹細胞の多分化能への影響を評価する。また、正常および遺伝子欠損マウス由来の造血幹細胞を採取し、免疫細胞発生に必須の転写因子や系列マーカー遺伝子の発現解析を行う。 3.CAR細胞の血液細胞ニッチ機能の解明。 初年度のCAR細胞ニッチの解析結果をもとに、CAR細胞の突起を模した線状の構造に、細胞外マトリックスとCAR細胞の膜上の接着分子および増殖因子を、生理的濃度でコートする技術を開発する。これが開発できれば、この構造上で血液細胞を培養し、ニッチにおけるCXCL12の役割をリアルタイムで観察する。さらに、人工ニッチの構成分子を変更し、各分子の血液細胞の増殖、分化における役割を検討する。
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