2011 Fiscal Year Annual Research Report
造血系転写因子によるマスト細胞分化決定機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular mechanisms of cell fate determination in the cells that undergo stepwise differentiation to multiple pathways |
Project/Area Number |
23118525
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Research Institution | Takasaki University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
大根田 絹子 高崎健康福祉大学, 薬学部, 教授 (50323291)
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Keywords | 細胞分化 / 転写因子 / 遺伝子発現制御 / マスト細胞 |
Research Abstract |
本研究は、マスト細胞分化における造血系転写因子の役割を明らかにすることを目的とする。今年度は、マスト細胞に発現する他の転写因子との相互作用がよく知られているGATA1に注目し「条件付Gata1ノックアウトマウス」を用いてGATA1がマスト細胞の形成に必須であるか否かを明らかにする課題に取り組んだ。以前の研究から、GATA1はマスト細胞への分化決定には必須ではないが、その後の成熟・最終分化を制御すると考えられていた。ところが今回Gata1を完全に欠失させたマウスの皮下・腹腔の組織マスト細胞の分布を調べたところ、野生型との相違が観察されなかった。また、このマウスの骨髄細胞をIL-3,SCF存在下で培養したところ、野生型と同様の性状を示す骨髄マスト細胞(BMMC)が得られた。また、野生型BMMCの培養経過を追ってGata1とGata2のmRNA量を定量したところ、GATA2は他のマスト細胞分化マーカーとともにその発現が増加したが、GATA1の発現量は赤血球と比較して低いレベルのまま変化しなかった。赤血球においてGATA1とGATA2は分化段階特異的にお互いの発現を制御することがよく知られているが、BMMCや培養マスト細胞株(RBL-2H3)においてGATA1・GATA2の発現量を変化させても、相互の発現制御を示唆する結果は得られなかった。一方、Gata1ノックアウトマウスの骨髄細胞をメチルセルロースコロニーアッセイで解析したところ、マスト細胞のみから構成される大型のコロニーが多数観察された。これらの結果から、GATA1はマスト細胞前駆細胞の増殖を負に制御している可能性があるが、これまでの報告とは異なり分化したマスト細胞の形質維持には必須ではないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
マスト細胞でのGATA1の役割について、研究開始前に考えられていたのとは異なる興味深い結果が得られたため。また、その結果に基づいて、申請時には予定していなかったGATA2の機能欠失解析とGATA1/GATA2ダブルノックアウト細胞の解析に着手し、その準備が順調に進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
マスト細胞でのGATA1の役割については、これまでの報告とは異なる結果が得られているので、実験条件の相違などを十分に考察したうえで、研究発表を行う。また、GATA1欠失により発現量が変化したいくつかの遺伝子について、マスト細胞の生理機能との関連を更に精査する。 上述したように、今後は、マスト細胞におけるGATA2の機能欠失解析とGATA1/GATA2ダブルノックアウト細胞の解析を計画している。研究遂行上の問題点は特になく、準備は順調に進んでいる。
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Research Products
(5 results)