2011 Fiscal Year Annual Research Report
ATRAによるAPL細胞の分化誘導の分子メカニズム
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular mechanisms of cell fate determination in the cells that undergo stepwise differentiation to multiple pathways |
Project/Area Number |
23118528
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
小松 則夫 順天堂大学, 医学部, 教授 (50186798)
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Keywords | 急性前骨髄球性白血病 / ATRA / FOXO3A / NAMPT / 分化 / SIRT1 |
Research Abstract |
本研究は、レチノイン酸誘導体(ATRA)による急性前骨髄球性白血病(APL)細胞の分化誘導において、NAMPTやNAD依存性脱アセチル化酵素SIRT1の活性化と、これらに伴う転写因子FOXO3Aの脱アセチル化亢進による活性化が関与することを明らかにすることを目的としている。 まずATRAでSIRT1が活性化されるかを調べる目的で、SIRT1の脱アセチル化酵素活性を試験管内で測定したが、細胞から抽出されたSIRT1の活性に、ATRA処理の有無で変化は見られなかった。試験管内のアッセイ系では、細胞内のNAD濃度により変化するSIRT1の活性を反映できないことから、細胞内のSIRT1活性を評価するため、基質であるp53のアセチル化状態について、アセチル化特異的抗体を用いてウエスタンブロット法により、解析を行なった。この結果、p53のアセチル化状態は、ATRA処理の有無にかかわらず、変化が見られなかったことなどから、ATRA処理によるSIRT1の活性化が生じていないことが示唆された。 次に、SIRT1が、ATRAによるAPL細胞の好中球分化に必要であるかどうかについて、ATRA処理時に阻害剤を用いてSIRT1の活性を阻害し、ATRAによる好中球分化が掬制されるかについて、検討を行なった。その結果、Tenovin-6の添加によるATRA依存的な細胞分化に対する影響は見られなかった。しかし、予想に反して、Tenovin-6単剤でAPL細胞を処理した際に、ATRAと同様の好中球様細胞への分化が観察された(53回米国血液学会にて発表)。これは、我々の仮説とは逆に、SIRT1の活性の阻害が、AT踏によるAPL細胞の分化誘導を引き起す事を強く示唆している。現在、ATRAが、どのようにSIRT1の活性低下を引き起すのかという点に着目して、研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の計画はほぼ完了している。我々の仮説とは異なる現象が見いだされたが、ATRAによるAPL細胞分化のメカニズム解明に近づいている。
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Strategy for Future Research Activity |
SIT1阻害剤を用いることでATRAによるAPL細胞の分化にSIRT1が関わっていることが示唆されたが、FOXO3Aのアセチル化レベルについては十分な検討がなされていない。これは免疫沈降した内在性のFOXO3Aのアセチル化を検出するウエスタンブロット法で安定した結果が得られなかったためであり、エピトープタグのついたFOXO3Aを遺伝子導入し、タグに対する抗体を用いて免疫沈降を行ない、アセチル化を評価することを検討している。またSIRT1阻害剤によりAPL細胞の分化がみられたが、これが特異的なものかを評価するため遺伝子発現ノックダウンなどによる確認を行なう予定である。
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Research Products
(6 results)