2011 Fiscal Year Annual Research Report
ATPを中間体とする概日時計蛋白質KaiCの新規自己脱リン酸化機構とその意義
Publicly Offered Research
Project Area | Water plays a key role in ATP hydrolysis and ATP-driven functions of proteins |
Project/Area Number |
23118708
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大川 妙子 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 特任講師 (30432230)
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Keywords | 脱リン酸化 / 反応機構 / 中間体 / ATP / ADP / 概日時計 |
Research Abstract |
シアノバクテリア概日時計は試験管内再構成が可能な唯一の例である。KaiA、KaiB、KaiCをATPと混合することにより、KaiCのリン酸化リズムが生じる。KaiCは6量体型のP-loop ATPaseであり、ATPase活性、自己リン酸化活性、自己脱リン酸化活性を併せ持つ。KaiCはプロテインホスファターゼとは全く起源が異なるにもかかわらず、いかにして自己脱リン酸化を行うのかは不明であった。 平成23年度は、KaiCの自己脱リン酸化機構を明らかにした。KaiCの自己脱リン酸化反応を追跡するため、まずKaiCを[γ^<-32>P]ATP存在下で自己リン酸化し、^<32>Pで放射性ラベルされたリン酸化型KaiC(^<32>P-KaiC)を得た。次に6量体のサブユニット境界に結合している[γ^<-32>P]ATP由来のシグナルを除くため、KaiCをATP非存在下において氷上で24時間放置することによってKaiCを単量体化した後、非放射性のATPを加えることによって再6量体化した。この操作により残存する放射性ATPが除去できた。30℃で自己脱リン酸化反応を追跡したところ、反応初期に最終産物である無機リン酸(^<32>Pi)の増加に先だって、一過的に[^<32>P]ATPが増加することが観察された。この結果に基づいて速度論的解析を行ったところ、KaiCの自己脱リン酸化は2段階の連続反応であることが明らかとなった。1段階目は自己リン酸化の逆反応であり、反応中間体としてATPが生成する。2段階目は中間体ATPの加水分解反応である。この機構は一般的なプロテインホスファターゼのものとは異なる新規の機構である。リン酸化の逆反応はADP要求性であるが、これまでKaiCへのADPの結合は報告されていなかったため、30℃でKaiC結合ヌクレオチドの経時変化を観察した。KaiCには6量体あたり12個のヌクレオチドが結合しており、反応前にはその約90%がATPであったが、徐々にADPの割合が増加し、約4時間で約70%をADPが占めるようになったことから、KaiCには実際にADPが結合していることが確認できた。以上をまとめて論文として報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の目標の1つである、KaiCの自己脱リン酸化機構の解明は達成でき、一般的なプロテインホスファターゼとは異なる新規の機構であることを証明できた。もうひとつの目標である、概日リズム発振におけるこの反応機構の意義の解明についても、KaiA、KaiBによるKaiC結合ヌクレオチドの制御に関して、予備的な結果が得られつつある。しかしながら、生化学的な手法以外の方法を取り入れて、多面的なアプローチを行うには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、代表者がこれまでに作成したリン酸化部位や、ATPase活性部位等に変異を導入したKaiC蛋白質を用いて、リン酸化リズムのリン酸化フェーズと脱リン酸化フェーズ間の切り替えにおいて、この反応機構がどのように機能しているかを明らかにしたい。また研究をさらに発展させるためには、KaiC6量体上の活性部位や制御部位の位置に関するデータが必須であるため、領域会議や学会などの場を利用して情報収集につとめ、新たな手法を取り入れていきたい。
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