2011 Fiscal Year Annual Research Report
トランスポーターにおけるATP駆動力共役メカニズムの立体構造基盤
Publicly Offered Research
Project Area | Water plays a key role in ATP hydrolysis and ATP-driven functions of proteins |
Project/Area Number |
23118709
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 博章 京都大学, 薬学研究科, 教授 (90204487)
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Keywords | 膜蛋白質 / X線解析 / 結晶構造 / 薬物輸送 / ATP |
Research Abstract |
多剤排出型ABC(ATP Binding Cassette)トランスポーターは、ATPの加水分解を利用して得たエネルギーを用いて多種多様な化合物を細胞外へと排出する膜タンパク質である。その構造は、6本の膜貫通αヘリックスから成る1つの膜貫通ドメインとRecA foldから成る1つのATP加水分解ドメインで作られる構造単位2つで1分子が構成されている。多剤排出型ABCトランスポーターは、生体防御に重要な役割を担っており、例えばヒトのP糖タンパク質(Pgp;MDR1;ABCB1)は体内薬物動態の要として小腸上皮細胞や血液脳関門などにおいて異物の体内への侵入を防いでいる。また、神経変性疾患とも関わりがあり、アルツハイマー病に伴い出現するアミロイドβペプチドを脳から除去している。一方で、ガン細胞におけるPgpの発現が、抗がん剤に対する多剤耐性を引き起こす原因として知られている。我々は、Pgpホモログを単細胞真核生物から見いだし、そのアミノ酸配列がヒトのPgpと高い類似性を示すことを見いだすとともに、7つの多剤排出型ABCトランスポーターを欠失した酵母に発現させたPgpホモログが多剤排出活性を発揮することを実証した。そして、メタノール資化性酵母Pichia pastorisを用いて大量発現したPgpホモログを高度に精製して結晶化を達成し、その結晶構造を決定した。さらに、結晶構造に基づいて部位特異的変異導入を行うことにより、ABCトランスポーターメカニズムにおいて、ATP加水分解によって生じる駆動力を伝達する連結ヘリックスIH1とIH2の役割について解析した。その結果、IH1,IH2の立体構造維持に関与するアミノ酸残基とATP結合ドメインとの相互作用に寄与するアミノ酸残基を同定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書にて掲げた研究実施計画、すなわち、ABCトランスポーターのX線結晶構造解析を実施すること、および、結晶構造に基づいたATP伝達機構の解明について、ほほ達成することができた。その結果については、論文公表前から多くの問い合わせがあり、3件の招待講演を行うことになった。現在、論文を執筆中であり、今年度中には掲載されると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
頭書の予定通り、計画が進展しているが、「外向型構造」の結晶化については、さらに革新的なアイデアを考案できたことから、当初計画した変異体の利用に加えて、実施することを検討する。これは、ランダムペプチドライブラリーを用いて、非常に結合力の強い阻害剤を簡単に選抜して取得する方法であり、高い貢献度が期待されるにもかかわらず、追加しての検討が容易であると考えられる有望な方策である。
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Research Products
(5 results)