2011 Fiscal Year Annual Research Report
中性子散乱によるアクチンフィラメント形成機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Water plays a key role in ATP hydrolysis and ATP-driven functions of proteins |
Project/Area Number |
23118718
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
吉田 亨次 福岡大学, 理学部, 助教 (00309890)
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Keywords | 化学物理 / X線散乱 / 生物物理 / 液体 / タンパク質 / 水和 |
Research Abstract |
X線散乱を利用して、F-アクチン分子ならびに水和水の構造とダイナミクスを明らかにし、アクチンフィラメント形成機構における水分子の役割の解明を行うことを目的として、本年度は以下の研究を実施した。 1.溶液X線によるアクチン水和水の液体構造解析 ウサギ筋肉アセトンパウダーよりG-アクチンを抽出・精製した後、塩添加により重合させ、超遠心分離によりF-アクチンペレットを回収した。凍結乾燥後、蒸気圧を制御した水蒸気雰囲気下で水和アクチン粉末(~0.4g water/g protein)を調製した。そして、石英ガラスキャピラリーに封入し、イメージングプレートX線構造解析装置でX線回折を測定した。溶液X線構造解析で確立された解析手法を本試料に適用することにより、298Kから170Kの温度範囲で水和アクチンの動径分布関数を得た。低温でも水和水の凍結によるBraggピークは観測されず、アクチン水和水は不凍水であることが明らかになった。現時点の結果では、水和水とアクチン分子からの散乱の両方が観測されているため、乾燥状態のアクチン粉末の測定などにより、水分子同士ならびにアクチン-水分子間の水素結合に関する情報を得る。 2.水和アクチンのX線非弾性散乱(集団ダイナミクス測定) 1と同様の方法により調製した試料について、SPring-8BL35XUにて高分解能X線非弾性散乱測定を実施した。測定した温度は300Kから180Kまでである。散乱ベクトルQが9nm'1付近までは、励起エネルギーΩ_QはQに対して比例関係にあり、高周波音速を求めると、約2700ms^<-1>であった(バルク水では約3200ms^<-1>)。また、DHO半値半幅Γ_QはQ^2に対して比例関係にある。これはΓ_QがQに対して比例関係にあるバルク水の場合とは対照的である。今後、Brillouin散乱やMD等により、アクチン水和水の集団ダイナミクスと液体構造との関連を調べる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
溶液X線回折ならびに非弾性散乱測定を実施し、アクチン水和水の構造とダイナミクスの情報を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
MD等により、アクチン水和水の集団ダイナミクスと液体構造との関連を調べる。リゾチームなどの他のタンパク質の水和水との比較を行う。最終的にアクチンフィラメント形成機構における水分子の役割の解明を行う。
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Research Products
(2 results)