2011 Fiscal Year Annual Research Report
液体の統計力学と量子力学に基づくATP加水分解の自由エネルギー解析
Publicly Offered Research
Project Area | Water plays a key role in ATP hydrolysis and ATP-driven functions of proteins |
Project/Area Number |
23118719
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
吉田 紀生 分子科学研究所, 理論・計算分子科学研究領域, 助教 (10390650)
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Keywords | RISM-SCF / ATP加水分解 / 自由エネルギー / QM/MM/RISM / ピロリン酸 |
Research Abstract |
本年度はATPアナローグとして,ピロリン酸を選び,その加水分解反応の自由エネルギー解析を詳細に行った。ピロリン酸は溶液のpHにより4つのプロトン化状態を取ることが知られており,本研究ではその4つ全てに対して解析を行った。実験とRISM-SCFによる溶液内反応の計算結果は驚くほどの一致を見せた。 これまでにも,誘電体モデルなどのパラメータに依存した計算が行われており,ある程度実験値を説明しうる結果が出されてきたが,これはATP加水分解における溶媒効果の重要性をパラメータ無しの計算で証明したという点で大きな意義を持つ。 また,単なる反応エネルギー解析だけでなく,自由エネルギー成分の分析も行った。この結果から,反応の自由エネルギーの寄与は大きく分けて二つの要素が考えられることを示した。一つは水素結合など,溶質-溶媒間(ピロリン酸-水間)の分子的特徴を反映した近距離の相互作用,もう一つは長距離にわたる静電相互作用である。ピロリン酸の総電荷が0ないし-1の場合は近距離相互作用が,-2および-3では長距離相互作用が自由エネルギー変化の主たる要因となる。 従来の誘電体モデルの計算では長距離相互作用のみが考慮されており,近距離相互作用に関しては経験的パラメータに依存するか全く無視しており,このために精度と普遍性を欠いた結果となっていた。 この研究の成果は現在論文としてまとめて,投稿段階にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目的であったピロリン酸の加水分解反応解析はほぼ終了している。また,次の段階の解析に必要なQM/MM/RISMのプログラム開発も基本部分は終了している。化学反応ポテンシャル面の解析に必要なプログラムの開発も終了している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を基に,MTPの加水分解反応解析をすすめる。また,これまでは純水中での解析であったが,電解質溶液中での反応解析をすすめる。これは新学術領域研究の会合で行った議論で新たに発案したテーマである。
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