2011 Fiscal Year Annual Research Report
中性子散乱によるF-アクチン周辺水和水の構造・ダイナミクス解析
Publicly Offered Research
Project Area | Water plays a key role in ATP hydrolysis and ATP-driven functions of proteins |
Project/Area Number |
23118720
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
藤原 悟 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究主幹 (10354888)
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Keywords | アクチン / X線小角散乱 / 中性子散乱 / 水和 / ダイナミクス |
Research Abstract |
本研究では、中性子散乱の様々な手法を組み合わせて、ATP駆動蛋白質F-アクチンの(ハイパーモバイル水まで含めた)水和構造並びにそのダイナミクスの解析を行う。特に、筋収縮蛋白質ミオシンS1と相互作用する際の(F-アクチン単独の場合と比較した)水和構造の変化を中性子およびX線小角散乱、そのダイナミクスの変化を中性子準弾性散乱により解析し、アクチン-ミオシン相互作用における水和水の役割を明らかにすることを目的としている。 平成23年度は、その第一段階として、中性子小角散乱及び中性子準弾性散乱測定の試料条件および実験条件を決定するための、X線小角散乱(SAXS)測定を行った。F-アクチン溶液およびF-アクチンにミオシンS1(酵素処理により単離したミオシン頭部領域)を様々な量比で加えた溶液を重水(H_2O)中並びに軽水(H_2O)中で調製し、それらの溶液のSAXS測定を行った。その結果、H_2OおよびH_2O中においてF-アクチンのふるまいは変わらないこと、特に、断面の慣性半径の濃度依存性がみられないことを明らかにした。さらに、ミオシンS1の結合による断面の慣性半径の増加が実際に観測されること、そして、その増加の割合はミオシンS1結合の量比の増大に対応していることが示された。これらの結果は、中性子小角散乱を用いたF-アクチンおよびF-アクチン+ミオシンS1の水和水構造の解析のための実験が実際に可能であることを示しており、次年度に行う実験の基礎として重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題で行うべき測定の内で、中性子小角散乱測定ならびに中性子非弾性散乱測定の基礎となり、かつ測定条件決定のためのX線小角散乱測定を予定通り実行し、中性子測定の実験条件を決定できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
F-アクチンおよびF-アクチン+ミオシンS1の中性子小角散乱による水和水構造情報の抽出と中性子非弾性散乱におる水和水のダイナミクス情報の抽出を行う。これらの水和水情報を総合することにより、ハイパーモバイル水の存在を検証する。
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