2011 Fiscal Year Annual Research Report
環境変動に伴う植物のゲノム変化とストレス応答
Publicly Offered Research
Project Area | Integrated analysis of strategies for plant survival and growth in response to global environmental changes |
Project/Area Number |
23119501
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊藤 秀臣 北海道大学, 大学院・理学研究院, 助教 (70582295)
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Keywords | トランスポゾン / シロイヌナズナ / 環境ストレス |
Research Abstract |
環境ストレスは遺伝子や転移因子(トランスポゾン)の発現に影響を与えることが報告されている。トランスポゾンは様々な生物に広く存在しゲノムの主たる構成要素となっている。多くのトランスポゾンは遺伝子間領域やヘテロクロマチンに存在し不要な因子と考えられてきた。しかしながら近年トランスポゾンがゲノムの安定化に重要な働きをしていること、近傍の遺伝子の発現を調節していることなどが報告されるにつれその重要性が明らかになってきた。このことは環境の変化に伴って活性化したトランスポゾンがゲノム構造の変化や近傍の遺伝子発現に変化をもたらし、その結果生物種に多様性を生みだす可能性を示唆している。本研究は環境ストレスが植物に与える影響について「ゲノム構造の変化と環境適応」という側面からアプローチし、ストレス条件下で活性化するトランスポゾンとそれを制御する宿主側の遺伝子の解析を行うことにより大地・大気環境の変動に対処するために植物がもつ巧妙な生存戦略について理解することを目的とした。最終的には実際にストレスにより活性化するトランスポゾンを用い植物のゲノム構造を変化させ環境適応能力を獲得した個体を作り上げることを目的とした。現在までの研究結果として以下のものが挙げられる。1)本研究で同定した高温ストレスで活性化するトランスポゾンを用いてストレスへの感受性を明らかにした。温度条件を変化させることで熱ストレスで活性化するトランスポゾンの活性閾値を同定した。2)熱ストレス活性型のトランスポゾンは世代を超えた転移が認められる。このトランスポゾンの転移を抑制する因子としてRNA干渉の変異体を用いた研究から転移の抑制に働く因子を同定した。3)トランスポゾンの転移の制御機構に関して組織特異的な制御が推測された。この仮説を検証するために脱分化細胞を用いた実験を行い組織特異的な転移制御機構を示唆する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では研究計画として大きく分けて3つのテーマを進めている。1、高温ストレス環境下で活性化するトランスポゾンの解析では、熱ストレスで活性化したトランズポゾンの新規挿入によるストレス耐性個体を得ることができた。現在その詳細な挿入先を次世代シークエンサーを用いて解析している。2、環境ストレスで活性化したトランスポゾンの転移制御機構の解析では野生型と転移の確認された変異体系統を用い植物の成長段階ごとに転移頻度の解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究テーマの3つ目である環境ストレスにより活性化する新規トランスポゾンの単離には現在までに至っていない。ストレス条件などを工夫することで新たなトランスポゾンの同定を試みる。また、現在までに同定にはシロイヌナズナのゲノムを網羅的に解析するためにタイリングアレイを用いることで世代を超えてコピー数の増加したトランスポゾン配列の検出を行ってきたが、新規の転移の検出方法も工夫する必要がある。
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Research Products
(1 results)