2011 Fiscal Year Annual Research Report
低温ストレス応答におけるmRNA合成と分解の協調的制御システム
Publicly Offered Research
Project Area | Integrated analysis of strategies for plant survival and growth in response to global environmental changes |
Project/Area Number |
23119502
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
千葉 由佳子 北海道大学, 創成研究機構, 特任助教 (70509546)
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Keywords | 低温ストレス / mRNA分解 / シロイヌナズナ |
Research Abstract |
移動という逃避手段を持たない植物にとって、急激な環境の変化は大きなストレスであり、随時、適応していかなくてはならない。これまでのストレス応答に関わる遺伝子発現制御機構の研究は、転写制御に関するものが中心であったが、実際の細胞内のmRNA量は合成と分解のバランスにより調節されている。ゆえに合成と分解の両方の制御機構を理解して初めて,遺伝子発現における植物の持つ巧妙なストレス応答システムを真に理解したことになる。いろいろな環境変化の中でも低温は、迅速に対応しなくてはならない主要な環境ストレスのひとつである。本研究ではマイクロアレイと転写阻害剤処理を組み合わせた解析である“mRNA-decay array”によって低温ストレスに応答してmRNA分解速度が大きく変化している遺伝子を探索した。本年度はその詳細な解析を進めることによって,以下のことを明らかにした。 ①低温下では多くの遺伝子が安定化し,その半減期がコントロール条件下のおよそ12倍になっていることがわかった。また,この安定化は低温における一般的な酵素活性の低下によるものであることが示唆された。②低温によって引き起こされる一般的な安定化を基準に,より安定化あるいは不安定化する遺伝子群を単離したところ,数千の遺伝子群が低温ストレスに応答して,その分解の速度を変化させていることを見出した。③興味深いことに,ストレス応答あるいはホルモン応答に関わる遺伝子群が,その発現レベルを上昇させる一方で不安定化される傾向があることを明らかにした。④多くのPPR遺伝子が低温ストレスに応答して不安定化されることを見出した。⑤低温に応答して安定化あるいは不安定化する遺伝子の,様々な遺伝子構造上の特色を見出した。 一方で,低温ストレスに応答して発現レベルを上昇させる一方で不安定化される遺伝子群に関する個別解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
mRNA-decay arrayの詳細な解析に予想以上の時間を必要としたため,個別解析が若干予定より遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は個別遺伝子の解析および数理モデリングを組み合わせたmRNA合成と分解速度の網羅的解析を進める。
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