2011 Fiscal Year Annual Research Report
環境要因が根端成長に及ぼす影響の数理モデル解析
Publicly Offered Research
Project Area | Integrated analysis of strategies for plant survival and growth in response to global environmental changes |
Project/Area Number |
23119505
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
岩元 明敏 東京学芸大学, 教育学部, 助教 (60434388)
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Keywords | 数理モデル / シロイヌナズナ / 根端成長 / カルシウムイオン / ホウ素 |
Research Abstract |
平成23年度は、これまでのモデル解析に核内倍加の影響を取り入れることを目指し、細胞サイズベースだった数理モデルをゲノムベースのモデルに変更し、新たな解析手法を確立した。これにより、数理モデルによる予測値のフィットが向上し、より精度の高い解析が可能となった。 また、この改善した数理モデルを用いて、カルシウムイオン透過性機械受容チャネル候補遺伝子MCA1,MCA2の変異体の根端の成長解析を行った。その結果、mca1 mca2とmca2ではMCA2の発現域で野生型に比べて体積増大速度に低下が見られた。また、全ての変異体で野生型と比べて細胞増殖率には顕著な違いは見られなかった。この結果について数理モデル解析を行ったところ、mca2では体積増大コストがやや上昇していたものの、ゲノム複製(細胞増殖)コストはさらに大きく上昇していることが明らかとなった。このことは、MCA2を介したカルシウムイオンの取り込みと根端成長における細胞増殖との間に関連があることを示唆している。両者の関連性についてはこれまでほとんど指摘されておらず、数理モデル解析によって明らかになったものと言える。 さらに、ホウ素によるRG-II架橋が根端成長に及ぼす影響について明らかにするため、L-フコース欠損変異体mur1-1の根端成長解析を行った(計画班:馬建鋒 研究分担者:藤原徹との共同研究)。その結果、mur1-1の根端成長について、野生型に比べて(1)体積増大および細胞増殖速度が全体的に低下する(2)先端付近では細胞サイズが上昇するという結果が得られた。現在は、この結果についての数理モデル解析を進めており、ホウ素による架橋と成長変化との関連についての詳細な検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記載した核内倍加の影響を考慮した数理モデルの改善と新たな解析手法の確立を行い、実際にその手法を用いて環境要因に関連する遺伝子の変異体の解析を進めることが出来ていることから、おおむね順調に伸展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在解析を行っているMCA1,MCA2およびMUR1以外の環境応答に関わる遺伝子の変異体について数理モデル解析を進め、各遺伝子が根端成長に与える影響を定量的に明らかにしていく。特に、当該領域内の他班で研究が進められている遺伝子群の解析を積極的に行い、他班の研究成果と本数理モデル解析との融合を目指していきたい。
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