2011 Fiscal Year Annual Research Report
植物の環境応答における細胞壁ペクチンの機能解明
Publicly Offered Research
Project Area | Integrated analysis of strategies for plant survival and growth in response to global environmental changes |
Project/Area Number |
23119509
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 優 京都大学, 農学研究科, 准教授 (60281101)
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Keywords | 植物 / ストレス / 細胞壁 / 多糖類 / ペクチン / 環境応答 |
Research Abstract |
植物細胞壁を構成する主要成分のひとつであるペクチンゲルの生理機能を明らかにするため、ペクチンのゲル構造が撹乱された植物の表現型解析を進めている。ペクチンはラムノガラクツロナンII(RG-II)領域においてホウ酸エステルで架橋される。そのRG-IIの特異的構成糖KDO(2-ケト-3-デオキシオクトン酸)の合成に必要な酵素CKS(CTP:KDOシチジリル転移酵素)について、RNAi法で発現を抑制したシロイヌナズナを作成した。RNAi株は野生型株に比べ主根伸長が抑制されていた。主根伸長阻害の原因を解析した結果、RNAi株では根端分裂組織における細胞分裂速度が低下していることが示唆された。このことは植物の細胞増殖におけるペクチンの重要性を示すものである。 ペクチンゲルの機能を進化的観点から考察することを目的として、非維管束植物であるゼニゴケにもRG-IIが存在し何らかの生理機能を担っているか検討を進めている。RG-IIの特異的構成糖であるKDOおよびアピオースの合成酵素様遺伝子について、プロモーターGUSコンストラクトを導入した形質転換ゼニゴケを作出した。予備実験の結果、両遺伝子とも葉状体の特異的な領域で発現していることを見出した。 またペクチンを細胞外リガンドとする受容体型タンパク質リン酸化酵素WAK(細胞壁結合型キナーゼ)の機能を解明するため、タバコ培養細胞を実験系としてタバコのWAK様蛋白質NtWAKL1の機能解析を行っている。NtWAKL1の細胞内相互作用分子を同定するため、NtWAKL1にアフィニティ精製用のGSタグを付加したNtWAKL1-GSを安定的に発現する細胞株を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CKS発現抑制株について、実際に生育に影響が生じる条件、また逆にその表現型が抑制される条件を見出した。次年度以降、この実験系を用いて解析を進めることでペクチンの生理的重要性について有用な知見が得られると期待されることから、初年度の研究目標は達成したと考える。ゼニゴケを用いた実験については当初計画には含まれていなかったものであるが、「植物環境突破力」領域内共同研究として開始、進展しており興味深い結果が得られつつある。WAKの機能研究については当初計画よりは時間を要しているものの、遭遇した技術的問題に対する解決策は実施ずみである。以上のことから全体として本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
CKS発現抑制株を用いたペクチンの機能解析については、CKS発現抑制の影響を更に詳細に解析するとともに、表現型が抑制される条件・メカニズムを解明することで、ペクチンの完全性が不可欠な環境条件とはどのようなものか明らかにする。 ゼニゴケについてはRG-II合成関連酵素の発現解析、ノックアウト株の解析を進め、基部陸上植物におけるRG-IIおよびペクチンの機能に関する知見を得る。 WAKについては相互作用分子の解明を進めるとともに、最近公開されたタバコゲノム情報を基にホモログの探索を行い、発現時期、刺激応答性についての検討も行うことで、WAKの生理機能に関する手がかりを収集する。
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