2011 Fiscal Year Annual Research Report
ミネラル欠乏ストレス時に根で機能する輸送体の包括的解析
Publicly Offered Research
Project Area | Integrated analysis of strategies for plant survival and growth in response to global environmental changes |
Project/Area Number |
23119512
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
深尾 陽一朗 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 特任准教授 (80432590)
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Keywords | ミネラル欠乏 / シロイヌナズナ / プロトプラスト / 根 / プロテオミクス / FACS / 輸送体 |
Research Abstract |
植物は栄養飢餓に曝されると必要なミネラルを土壌から吸収して体内に分配する。本研究では、植物がミネラル欠乏に陥ったときに、根が土壌からミネラルを取り込み導管へ排出するまでの過程で機能する輸送体タンパク質情報を細胞層ごと(表皮、皮層、内皮、内鞘、中心柱)に取得し、その機能を理解する。さらに個々の輸送体機能を解析した結果を統合し、複数の輸送体がどのように協調して環境変化に適応するのかを明らかにする。 本年度は主に本研究を推進するための技術的な基盤整備を行った。 ・シロイヌナズナ根からのプロトプラスト調製とFACSによる回収の最適化 過去に報告されている手法を基に、セルラーゼ濃度やプロトプラストのソート液の組成を再検討し、回収時のプロトプラストに対するダメージを軽減する方法に改善した。プロトプラストが破壊されることなく、GFP蛍光を発するプロトプラストのみを純度高く回収できる手法を確立した。 ・微量タンパク質同定のためのサンプル調製法と分析法の検討 特に輸送体などの膜タンパク質をより多く同定するために重要となる、「タンパク質サンプルの調製法」とトリプシン消化後の「ペプチドの分離法」ついて詳細に検討し、ペプチドを溶液中で等電点電気泳動により分画するOFFGEL法が有効であることを確認した。本法では、プロトプラストから6M Urea溶液でタンパク質を抽出し、希釈後トリプシン消化する。得られたペプチドをOFFGEL法により24分画し、各画分をC18レジンにより脱塩・精製した後、質量分析する。24の分析結果を統合してデータベースサーチを行い、合計で10μg相当のペプチドサンプルを用いて、1562個のタンパク質を同定することに成功した。膜貫通領域予測サイトSOSUIでこれらを検索したところ、24%に相当する380個が1回以上膜貫通領域を持つことが明らかとなった。またC18による精製法を変えることで、回収されるタンパク質の数や種類が異なることも確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画通り、本年度中にシロイヌナズナの根からプロトプラストを調製し、FACSにより回収するための実験系およびプロテオミクスのためのタンパク質調製法と同定手法に関して確立することができたが、通常の生育条件とミネラル(亜鉛、カルシウム、マグネシウムなど)欠乏条件で増減するタンパク質の同定には至らなかったため、やや遅れていると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
やや研究計画に遅れが生じているものの、当初の計画通り研究を推進することで目的を達成できると考えている。期間内に研究を完了させるために、FACSで回収した表皮細胞を用いてミネラル欠乏ストレスに応答する輸送体の同定を優先的に行い、それら輸送体の局在解析のためのGFP形質転換体作成にできるだけ早い段階で取りかかる。形質転換体が作成できたものから顕微鏡観察および免疫沈降実験を行う。また平行してカエル卵母細胞を用いた輸送体の活性測定のための準備を行い、遂行する。ただし研究代表者の先行研究から、輸送活性の条件検討に時間が要する可能性が考えられるため、SALK研究所から取得した変異体も機能解析に用いる。さらに各細胞層に局在するタンパク質の定性的な解析を行い、根における細胞層ごとのプロテオームマップを作成する。
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