2011 Fiscal Year Annual Research Report
イネの高マンガン集積に関与する分子機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Integrated analysis of strategies for plant survival and growth in response to global environmental changes |
Project/Area Number |
23119515
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
上野 大勢 高知大学, 教育研究部・総合科学系, 准教授 (90581299)
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Keywords | イネ / ストレス / 輸送体 / マンガン |
Research Abstract |
本研究ではイネのマンガン(Mn)集積機構を解明するために、地上部におけるMnの無毒化と根から地上部へのMnの移行に関わる輸送体を同定することを目的とした。本研究の遂行によって得られる知見は、拡大が続く酸性土壌において作物の生産性を向上させるための分子基盤となる。 本年度はまず、Mnの無毒化に関与する遺伝子を単離するため、イネ地上部由来のcDNAライブラリーを酵母Mn感受性株に導入し、相補株をスクリーニングした。これにより単離した輸送体遺伝子OsMTP8.1は主に地上部で発現し、コードするタンパク質は葉全体の細胞の液胞膜に局在していた。変異株は高Mn条件下でクロロシスを呈し、生育が阻害された。これらの結果は、OsMTP8.1がイネ地上部においてMnの液胞への隔離による無毒化に関与することを示唆している。 次に、イネ地上部へのMn移行に関わる輸送体を単離するため、イネの網羅的遺伝子発現に関するデータベースを利用して、根の中心柱で特異的に発現する輸送体遺伝子の中からOsMTP9を候補として選抜した。酵母発現系においてOsMTP9はMn感受性を相補した。この遺伝子は主に根で発現しており、内皮と内鞘にタンパク質の局在が観察された。変異株は野生株に対し地上部と導管液中のMn濃度が著しく低下し、逆に根では上昇しが、他の必須元素の濃度に差は見られなかった。また、野生株で見られたMn毒性は変異株では軽減され、地上部・根ともに生育の改善が見られた。以上の結果は、OsMTP9が根において導管へのMnのローディングに関与する特異的な輸送体であることを示唆しており、変異株ではその機能が失われたことにより地上部のMn濃度が低下し、Mn過剰害が軽減されたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的遺伝子の単離に成功し、実験もおおむね順調に進展しているが、まだ明らかにすべき事項が残っており論文の執筆までには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
OsMTP8.1に関しては、酵母発現系及び局在性の解析により、液胞へのマンガンの排出活性を持つことが示唆されているが、それを植物細胞において定量的に示す必要がある。そこで、野生株と変異株それぞれからプロトプラスト及び液胞を調整し、それぞれに含まれるマンガンを比較することにより機能を証明する。 OsMTP9の細胞内局在を明らかにするためにウエスタン解析をおこなったが、作成したポリクローナル抗体では検出できなかった。解決策として、過剰発現体の利用と異なる抗原ペプチドにより作成した抗体の使用を計画しており、現在両者を作成中である。その他、両遺伝子に関するより詳細な発現解析を計画している。
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