2011 Fiscal Year Annual Research Report
データ同化手法を用いた作物の環境ストレス応答の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Integrated analysis of strategies for plant survival and growth in response to global environmental changes |
Project/Area Number |
23119520
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Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
横沢 正幸 独立行政法人農業環境技術研究所, 大気環境研究領域, 上席研究員 (80354124)
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Keywords | 環境応答 / 作物生長 / 環境ストレス / 野外データ / データ同化 / ダウンレギュレーション / 施肥効果 / 土壌有機物分解 |
Research Abstract |
本研究は、作物生長システムモデルに対して、野外の観測データなどを用いてデータ同化法を適用することによって、モデルの高度化を行うとともに環境変動に対する作物成長応答メカニズムを解明することを目的として研究を行った。 1.光合成プロセスのモデルの精緻化と過去・将来気候値に対する作物応答 一般に、大気中二酸化炭素濃度の上昇により光合成速度は増加する(二酸化炭素施肥効果)が、野外環境では、実験室内よりかなり低い二酸化炭素濃度でその増加は逓減することが知られている(ダウンレギュレーション効果)。本研究では、ダイズを例にとり、作物生長システムモデルを構築し、野外環境で実験的に高二酸化炭素濃度条件にした際の作物生長に関するデータを元に、モデルをデータ同化することで、ダウンレギュレーション効果をモデルに組み込んだ。その結果、最大カルボキシル化反応速度が抑制されてダウンレギュレーションが起きていることが示唆された。また、各国の作物統計資料をもとに各地域で生長モデルを最適化させ、過去における二酸化炭素の施肥効果を定量化した。その結果、多いところでは30~40%程度、過去の二酸化炭素濃度上昇によって収量が増加していることが示された。さらに、将来の気候変化に対する作物収量の推計を行った結果、二酸化炭素施肥効果によって作物収量が増加する一方で、呼吸量の増加により、多くの地域で収量が減少すると推計された。 2.土壌環境基礎調査データを利用した土壌有機炭素の分解プロセスの精緻化 作物生長において、土壌中の有機炭素量の推定は無機化窒素量の推定に関係し重要である。そこで、土壌炭素動態を表すモデルと土壌環境基礎調査基準点調査データに対して、粒子フィルター法とメトロポリス・ヘイスティング法のハイブリッド法を開発し、データ同化を行うことで、土壌有機炭素の分解率の環境応答性をその時間変化を含めて推定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オリジナルの作物生長システムモデルを作成するとともに野外観測データを利用しやすいようにデータベースも整備した。また、既存のデータ同化アルゴリズムを改良し、時間変化するパラメータと時間変化しないパラメータを同時に効率よく推定する複合的なアルゴリズムを開発した。おおむね計画通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、作物生長システムモデルの光合成過程にダウンレギュレーション効果を組み込み高度化した。また、本研究に最適なデータ同化手法も確立した。今後は、今回使用したデータの他に、生理的なデータも本領域に参画している研究グループと協力して利用し、土壌の窒素、リンなどの動態とともに、作物がそれらの主要栄養素やケイ素などの成分に対して応答する過程を解明する。
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