2011 Fiscal Year Annual Research Report
リン酸欠乏に応答した葉の老化制御機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Integrated analysis of strategies for plant survival and growth in response to global environmental changes |
Project/Area Number |
23119523
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
梅原 三貴久 東洋大学, 生命科学部, 准教授 (30469895)
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Keywords | ストリゴラクトン / イネ / LC-MS/MS / 葉の老化 / リン酸欠乏 / 植物ホルモン / 転流 |
Research Abstract |
ストリゴラクトン(SL)の生合成あるいは信号伝達が欠損した突然変異体は、枝分かれが過剰なだけでなく、葉の老化が遅延する特徴も示す。そこで、野生型およびSL関連突然変異体における葉の老化速度を比較し、SL処理に対する応答性に関する調査を行った。また、SLはリン酸が欠乏するとその内生量が増加することが知られている。そこで、長期間リン酸欠乏条件下で栽培した場合、イネの形態や収量にどのような影響を及ぼすのか調査した。 イネの野生型およびSL関連突然変異体をそれぞれ水耕栽培し、2週目の実生の第3葉を2cmずつ切り出し、MESバッファー上に浮かべて老化の程度を比較した。その結果、SL関連突然変異体はいずれも野生型に比べて1-2日程度葉の老化が遅延する傾向が認められた。 次に、SLに対する応答性を調査した。イネのSL関連突然変異体のうち、d10、d17およびd27はSLの生合成が欠損した変異体で、d3およびd14はSLに対して非感受性を示す変異体である。SLアナログであるGR24を含むMESバッファーにこれらの葉を浮かべてSLの効果を調べた結果、SL生合成欠損変異体d10、d17、d27の葉の老化は早まったが、SL非感受性変異体d3、d14の葉の老化のタイミングは変化しなかった。これらの結果は、SLが枝分かれだけでなく、葉の老化も制御していることを示唆している。 さらに、水耕液中のリン酸濃度を減らして3ヶ月栽培すると、野生型では分げつ数が減少したが、1穂当たりの収量はほとんど変わらなかった。SL関連突然変異体のd3とd10も、リン酸を減らして栽培し続けると、野生型同様分げつの数が減少したが、1穂当たりの収量は増加した。今後、リン酸濃度を減らしたときの遺伝子や転流に関わる代謝物の量について調査する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は理化学研究所から東洋大学へ異動となり、研究室の立ち上げからのスタートとなった。理化学研究所からのバックアップもあり、急ピッチで研究室のセットアップを進めたが、実験材料である植物の栽培が軌道にのるまでに予想より時間がかかったことが大きな原因と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、まだ実施できていない葉の老化に関わる植物ホルモン(アブシシン酸、サイトカイニン、ジャスモン酸など)の分析に取り組む。また、水耕液中のリン酸濃度を減らしたときの葉の老化に関わる遺伝子発現解析および転流に関わる代謝物質の変動パターンをSL関連突然変異体を用いて調査する。ようやく研究室の実験環境が整い、平成24年度は植物育成チャンバーをもう一台増設して、研究室の学生と役割を分担しながら遅れを取り戻す。
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Research Products
(4 results)