2011 Fiscal Year Annual Research Report
脳皮質電位と白質画像融合による顔・表情認知システムの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Clarification of the mechanism of face recognition by interdisciplinary research |
Project/Area Number |
23119701
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
鎌田 恭輔 旭川医科大学, 医学部, 教授 (80372374)
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Keywords | 脳皮質電位 / 顔認知 / 視覚認知 / 高周波律動 / 標準化 / 自動判別 |
Research Abstract |
顔認知課題には側頭葉底部の関与が大きいことが指摘されている。我々はてんかん患者において診断目的に硬膜下電極を留置した際に顔、文字、ストライプなどの視覚提示を行い、顔・文字認知に関連した脳皮質電位変化を捉えた。本年度は従来型の半分の直径(1.5mm)、倍密度を有する高密度電極を作成して両側側頭葉底部に留置した。視覚認知課題はひらがな、図形、顔、ストライプを提示した。ECoG生データは周波数成分変化をPermutation testによる統計検定を行い、特に高周波成分である80-120Hzの周波数成分(high-Gamma band)に着目すると側頭葉底部では顔刺激では前方外側、ストライプでは後方正中部が有意に活動領域の違いがあった。この所見は5症例で同様の傾向を認めた。 ECoG生データを時間-周波数解析と統計学的処理をすることなく、自動判別ソフトウエアの開発と応用をおこなった。このためにMatlab上で動作するSupport vector machine(SVM)とSparse logistic regression(SLR)法を応用した。ECoGデータは取得したMatlabで読み込める形式に変換した。この2つの自動判別ソフトウエアでは15回のトレーニングセッション後にはほぼ100%で誘発ECoGから視覚刺激を予測することが可能になった。 30症例のECoG電極位置を標準座標に変換し、標準脳上に計3000点ECoGの表示を行う。これによる典型的なヒトにおける視覚認知のダイナミクスを把握することができる
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで30症例において計測を行った。視覚提示刺激に対する60-120HzのECoGのγ帯域成分の経時的(150, 175, 300msec)、空間的な広がりを可視化した。比較的単純な縞模様刺激では150-300msecの間後頭極に活動が限局していた。一方、顔刺激では150msecから両側側頭葉底部均等に活動、300msecになると縞模様刺激に比して右優位、かつ後頭極から前・外側の活動が強くなった。単語読みでは後頭極150msecにやや縞模様刺激より強いγ帯域成分の上昇を認め、最終的に300secでは優位半球(左)の活動が続いた。すべての症例で縞模様刺激では150-300msecの間後頭極にのみ活動を認め、顔刺激では300msecほどから側頭葉底面外側にγ帯域成分が広がるのが特徴的であった。 物品呼称課題と記憶課題:左内側側頭葉にγナイフによるRadiosurgeryでRadiation necrosisを生じていたが、記銘力障害は認めていないない例を経験した。この患者の左側頭葉内側部では電気的活動はほとんど認められなかった。Radiation necrosisのある左側からは電位変化はほとんど無かったが、右内側側頭葉では潜時600msec付近より陰性-陽性波が広範に出現していた。ほぼ類似した視覚刺激にもかかわらず、物品名称課題ではほとんど誘発されないが、記憶課題による明らかに電位変化が顕在化した。記憶課題では潜時500msecを中心として80-120Hzの高周波帯域成分の有意な増加を認めていた。内側側頭葉領域のγ帯域成分の解析は記憶機能の側方性局在を示すものと期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに症例数を増やして計測をしていく。症例数を増やしてECoG電極位置を標準脳に変換することで、認知ECoGを標準化して課題毎のヒト脳機能ダイナミクスを解明する。自動判別関数であるSupport Vector Machine;(SVM)、またはSparse Logistic Regression(SLR)を用いて脳信号(ECoG、脳波)の解読を行う。このように診断的目的ながらも侵襲的手法により効率的な脳情報の解読と、非侵襲的手法への応用、特に顔に特化した視覚情報の解読を行うことにより、ヒト高次脳機能ダイナミクスの解明が行える。また、この基礎研究により、顔、表情への反応を読み取り、生物の社会におけるコミュニケーション能力を定量的に解析することに役立つものと期待できる。また、非侵襲敵な機能画像と自動判別関数による認知機能評価は、従来の診察、問診、作業評価に加え、より客観的な診断法の確立に貢献できる。
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Research Products
(23 results)