Research Abstract |
ヒトを含む霊長類の脳内には「対象のアイデンティティーを,入力の感覚種を超えて普遍的に表現している」システムが存在し,前部下側頭領域および海馬を含む側頭葉内側部がこのシステムを構成すると考えられる.これらシステムのうち,本研究では海馬に着目し,その各亜領域(歯状回,CA3領域およびCA1領域)に記録電極を慢性埋め込みしたサルが,「顔」を用いた視覚弁別課題を遂行している時にニューロン活動の記録を試みた。本年度は,サルを1頭用い,頭蓋骨にヘッドホルダーを手術的に取り付けた.回復期間の後に顔の弁別課題の訓練を開始した.サルが行動課題を十分に学習した後,誘発電位マッピングにより海馬の各亜領域の位置を正確に推定し,その部位にテトロードを慢性埋め込んだ.テトロードは,実験日1日につき0.2mmずつ,目的亜領域の細胞層深部へと進めていき,オシロスコープ上で記録信号をモニターした.ニューロン活動が安定して記録されることが確認できた日には,サルに上記の課題を行わせた.そうしたところ,頭部の動きに伴う計測系への振動のため比較的大きなノイズが混入することがわかった.このノイズを軽減し,信頼性のあるニューロン活動記録を行うため,サル頭部の動きを減らす措置,テトロードのシャンク部分の支持の強化,可動部の遊びの低減,テトロードからヘッドアンプへのリード線の短縮と固定など振動防止の工夫を組み合わせたところ,ほぼ許容範囲までノイズは減少した.しかし,このノイズを試行錯誤により減らしていくのにかなりの時間を要したため,現時点ではまだ十分な数のニューロンから活動記録が行われていない.今後は,平成23年度の研究計画を継続して進めていくと共に,平行して平成24年度に計画している動物の行動訓練を進め,計画の遅れを挽回することに努める.
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