2011 Fiscal Year Annual Research Report
魅力的な顔に惹かれることの比較認知科学的研究
Publicly Offered Research
Project Area | Clarification of the mechanism of face recognition by interdisciplinary research |
Project/Area Number |
23119711
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川合 伸幸 名古屋大学, 情報科学研究科, 准教授 (30335062)
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Keywords | 平均顔 / 対称顔 / 魅力 / 選好 / サル / 進化 |
Research Abstract |
ヒトは魅力的な顔を好む。顔の魅力は時代や文化によってさまざまであるが、実験心理学の研究からは、平均顔や対称顔が好まれることが知られている。平均顔はその集団の遺伝的な逸脱の少なさを反映しており、それゆえ疾病などにかかりにくい。すなわち適応度が高いという説明が有力である。もしそうならば、ヒトと近縁なサルも、同じように平均顔を好むと考えられる。しかし、この仮説はヒト以外の動物で検証されていない。本研究は、ヒトが魅力的と感じる顔(平均顔、対称性の高い顔など)をサルも同様に選好するか、新たな選好法を用いて検討することである。 1)刺激の作成:そこで、新学術領域・顔認知のサル班で作成したサル顔データベースを用いて、実験個体にとっては未知のサルの正面顔から平均顔を作成した(2所属機関からそれぞれ5個体ずつ)。また別の機関の2個体から、それぞれの対称顔と非対称強調顔を作成した。 2)平均顔の選好テスト;従来、乳児や動物の選好は、いわゆる選考注視法(2枚の写真を同時に提示し、どちらを長く見ているか)によって調べられて来た。しかしこの方法は簡便であるものの、すぐに馴化が生じるという欠点も備えている。そこで本研究では、新たな選好法を提案し、この手法の有効性を検討することも目的とした。2枚の異なる写真をモニターに提示し、サルが選んだ写真だけが画面に残るようにし、選択した写真を残り6回選ぶと報酬が得られるという実験を行った。2組12枚のセットを10個体のサルでテストしたところ、有意な偏りは見られなかった。 3)対称顔テスト:平均顔テストと同じ手続きで、2個体分の対称顔と非対称強調顔を提示した。ただし、同じ個体の写真が同時に提示されないようにした。その結果、非対称強調顔を9個体中3個体が有意に多く選択した。これらの結果は、対称顔が遺伝子や発育の良さを表現しているために好むという進化心理学の説明とは一致しない。また、新たに提案した選好テストが、サルの選好を調べるのに有用であることも示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、4頭程度のサルを対象に平均顔や対称顔を好むかを調べる予定であった。そのための刺激の作成に年度の半分を費やすことを想定していた。しかし、研究員を雇用したことと、新学術領域・顔認知のサル班でサル顔データベースを作ったことにより非常に早く実験を開始できた。しかも、京大霊長研の協力を得て、10頭ものサルでテストできた。これはオペラント実験としてはきわめて個体数が多く、得られた結果の頑健生を保証するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
H23年度に予定していた課題はほぼ終了した。H24年度はさらに個体数を増やす。その他に、当初計画していたとおりネオテニーについての研究を行う。その際、サル乳児の顔写真が必要となるが、それを撮影するか、あるいはCGによってネオテニーを強調した顔をつくるかは試行錯誤をしながら検討する必要がある。
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