2011 Fiscal Year Annual Research Report
顔表情の認知プロセスに及ぼす遺伝子・環境の相互作用機序に関する認知科学的研究
Publicly Offered Research
Project Area | Clarification of the mechanism of face recognition by interdisciplinary research |
Project/Area Number |
23119712
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野村 理朗 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (60399011)
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Keywords | 顔表情 / 自己制御 / 遺伝子多型 / セロトニン / ドパミン / 遺伝子・環境相互作用 |
Research Abstract |
【目的】顔表情は、知覚者の感情を喚起し、その行動出力を方向づける。本研究は、顔表情が個体間の行動出力に及ぼす影響について、脳領域間の情報伝達を担うセロトニン神経系遺伝子多型の機能、及び環境要因としてのトリプトファンに着目して、顔表情の認知に関わる遺伝子・環境相互作用機序に関わるモデルを提唱することを目的としている。 トリプトファン急性枯渇法(ATD: Acute Tryptophan depletion)は,セロトニンの前駆物質,すなわちセロトニンの生成に必要となる必須アミノ酸のL-トリプトファン(L-tryptophan)量を低減させる手法である。この手続きにより生体内のセロトニンの前駆物質(トリプトファン)を増減させることで,セロトンが神経活動や行動に及ぼす因果関係を検討することが可能となる。このATDを行うと恐怖表情に対する扁桃体の反応性が上昇したり,強化学習課題において自身にもたらされる罰への感受性が上がるなど,セロトニンが脅威関連刺激の処理過程に影響しうる可能性が示されてきた。こうした動向を背景に,平成23年度は、セロトニン・トランスポーター(5-HTT)遺伝子に着目をし、怒りと恐怖が知覚者にもたらす行動反応の相違について更なる検討を行った。 実施したGo/Nogo課題における正反応は,例えば「中性表情」が出たらボタンを押し(Go反応),「恐怖表情」が出たらボタンを押さない(Nogo反応)といったように,個々のターゲットとなる表情が条件ごとに指定される。実験の結果,ATDにより,本来は回避性を喚起し,運動反応の抑制が比較的容易である恐怖表情に対するNogoエラー(衝動的反応)が確認された。他方,従来,運動反応の制御過程そのものへのセロトニンの関与否定的な知見が報じられていること併せて考えると,運動反応の制御過程そのものにセロトニンが関与せずとも,表情の感情的評価を通じた影響がこれに及ぶものと考えることが出来る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題において実験設定に困難の伴うトリプトファン操作に関わる実験課題を遂行できたため。ただし、サンプル数において予定以上の規模の採取が行われていないため、上記のように判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
(今後の推進方針) 今後は解析ターゲットとした各種遺伝子多型と、行動指標との関連について、多面的に解析を実施する予定である。 (次年度の研究費の使用計画) 研究成果を公表し、フィードバックを得、これを最終的な研究成果へと反映させるために、24年度において国内学会2回の参加のための旅費、ならびに、実験参加者への謝礼を1時間1千円として計上する。この他、研究成果を国際的学術雑誌に投稿、掲載するための費用を計上する。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] COMT Val 158 Met influences the perception of other's pain2012
Author(s)
Himichi, T., Kaneko, M., Nomura, J., Okuma, Y., Nomura, Y., Nomura, M.
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Journal Title
Psychology Research
Volume: (印刷中)
Peer Reviewed
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