2011 Fiscal Year Annual Research Report
発光を用いた植物環境センサーとイメージング技術の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Environmental sensing of plants: Signal perception, processing and cellular responses |
Project/Area Number |
23120501
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
綿引 雅昭 北海道大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (70396282)
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Keywords | オーキシン / ルシフェラーゼ / 遺伝応答 / 環境情報 |
Research Abstract |
本研究の研究の目的は,植物の形態形成に大きな影響を与える環境情報(重力,光,温度,湿度)に対する作用機作を定量的に解釈する基盤整備及び,実験手法の開発を行うことである。その代表的な生理作用は偏差成長などの細胞伸長と,側生器官形成などの新たな器官形成であり,そのどちらもオーキシン応答を初発点としている。早期オーキシン応答性遺伝子,IAA19は重力による背軸の偏差成長と,側根形成不全(器官形成異常)を示すことから,本遺伝子を用いてオーキシン応答の素過程を明らかにする実験系を構築した。実験計画に従い,1次元クリノスタットを用いた重力応答をIAA19ドミナントネガティブ突然変異体と野生型で比較したところ,有意な差は観測されなかった。しかし,IAA19の標的遺伝子の突然変異体arf7/19の2重変異体では重力屈性異常が見られたことから,IAA19はドミナント変異でも他のAUX/IAA遺伝子族と冗長的に機能しているという発見に至った。そこでIAA19プロモーターの下流に短寿命型のルシフェラーゼを配置した融合遺伝子を作成し,導入したシロイヌナズナの根で外性オーキシン応答を測定した。この実験系ではオーキシン応答の最初期を観測していると考えられる。そこでオーキシン活性速度,初期応答時間について野生型と突然変異体で比較したところ,オーキシン活性にのみ異常が観測された。このことは上記の遺伝子機能の冗長性を反映している証拠であると考えられ,オーキシン応答のネットワークを解明する重要な知見を得ることができた。一方,光レセプターを分子間FRETで励起する手法の確立は上記発見によって,一時的に休止しているが,本研究目的である植物の環境応答の基盤であるオーキシン応答経路の解明は大きく進行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主目的は環境情報によるオーキシンを介した形態形成過程を明らかにする実験手法の基盤整備であり,平成23年度に達成したオーキシン初発経路の定量解析は遺伝子族の冗長性を,短寿命型ルシフェラーゼによって明らかにできた点において,研究計画を順調に遂行できたと考えられる。一方,分子間FRET光レセプターの開発も,同新学術領域研究班と共同で行うこととし,進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究結果によって,IAA19ルシフェラーゼは忠実に初期オーキシン応答を反映していることが明らかになりつつある。これをさらに推進するために,現在行っているさまざまなオーキシン関連突然変異体や各種オーキシン関連阻害剤投与下でのオーキシンパラメーターの測定をおこない,初期過程を明らかにした時点で今年度研究成果を発表したいと考えている。分子間FRET光レセプターの開発は平成24年度中に試験管内実験を行う予定であるが,当初計画していた形質転換植物による確認実験は行わず,上記成果を発表することを第一の目標とする。
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