2011 Fiscal Year Annual Research Report
紫外-可視光波長可変レーザーを利用した植物の紫外光環境感覚に関する研究
Publicly Offered Research
Project Area | Environmental sensing of plants: Signal perception, processing and cellular responses |
Project/Area Number |
23120502
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
日出間 純 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 准教授 (20250855)
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Keywords | 光回復酵素 / 光発現誘導 / UVB / シグナル配列 / 葉緑体 / ミトコンドリア / 青色光反応 / 植物 |
Research Abstract |
本研究では、植物の光環境感覚の中でも紫外光に着目し、太陽紫外線の下で生きる植物にとって必須なタンパク質であるCPD光回復酵素の、(1)紫外光に対する遺伝子発現誘導、(2)本酵素の紫外光による細胞内局在の光応答反応(特に葉緑体への移行機構)を解析し、紫外光に対する植物の環境感覚を解明することを目的とする。 本年度は、CPD光回復酵素遺伝子の光発現誘導、特に青色光・紫外光による光発現に着目し、各種波長のLEDを光源に用いて解析を行った。その結果、UVA(365,375nm)、blue(460nm)、red(660nm)の光(1~20μmol/m^2/s)に対して、強度依存的に発現量は増加した。中でも、blueはmRNAの発現誘導に最も効率的であった。なお、green、far-redに対しては、mRNAの蓄積は認められなかった。したがって、イネのCPD光回復酵素の発現には、青色光、および赤色光受容体の複数の光受容体によって制御されている可能性が考えられた。また、UVB光に対する応答を調べるため、UVB蛍光管を用いて解析したところ、mRNAの蓄積の増加が認められた。現在、UVB-LED(280,310,325,340nm LED;DOWAエレクトロニクス)、およびUVBの光受容体と考えられているUVR8のイネ変異体(Tos mutant lines)を用いて、UVBによるCPD光回復酵素の発現誘導に関する解析を進めている。 次に、triple targeting proteinであるCPD光回復酵素の細胞内局在に関する光応答反応を解析するため、各オルガネラへの移行に関わるシグナル配列の同定を行った。その結果、核へは全長506アミノ酸のC末端側487-489のアミノ酸配列を、ミトコンドリアへは391-401のアミノ酸配列を利用していることが推測された。また、CPD光回復酵素-GFPをシロイヌナズナに導入した組換え体を作製し、「一細胞顕微照射システム」を用いて、光回復酵素の細胞内局在の光応答性に関する実験系を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り研究は進展しており、来年度実施予定の研究の予備解析である「一細胞顕微照射システム」を用いて、光回復酵素の細胞内局在の光応答性に関する実験系を確立するとともに、利用予定の実験植物の作製も順調に進んでいる。したがって、おおむね順調に研究は進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
課題1の「CPD光回復酵素遺伝子の光発現誘導」に関しては、現在進めているUVBによる光発現機構に関する解析、およびCPD光回復酵素のプロモーター解析を進め、他の光受容体を介した発現機構との相互作用について、変異体等を用いて解析する。課題2の「CPD光回復酵素の細胞内局在に関する光応答反応」に関しては、観察に最適な条件の検討が終了した。また、イネのCPD光回復酵素の結晶構造を明らかにすることが出来たため、今後は、光回復酵素の構造面からの知見も取り入れ、細胞内局在機構に関して明らかに出来ると考えている。
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