2011 Fiscal Year Annual Research Report
光合成環境感覚としての原型プラスチドシグナル
Publicly Offered Research
Project Area | Environmental sensing of plants: Signal perception, processing and cellular responses |
Project/Area Number |
23120505
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
田中 寛 東京工業大学, 資源化学研究所, 教授 (60222113)
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Keywords | Cyanidioschyzon / organelle / stress response / transcription / plastid signal / ChlH / abscisic acid / tetrapyrrole |
Research Abstract |
1、本年度の研究では、まずABAが細胞周期開始に及ぼす効果について検討した。暗期に同調したシゾン細胞に光を照射するとまずオルガネラDNA複製(ODR)が起こり、引き続いて核DNA複製(NDR)が起こる。暗明シフトの際にABAを添加し、その後のDNA複製について調べた結果、ODR、NDRともに当初の数時間は完全に阻害されていた。従ってABAの作用点はODRの上流にあり、MgPの作用点であるFbx3とは異なることが示唆された。また、ABAの光学異性体(+/-)のうち(+)型が活性型であることが示され、ABAによる効果が特異的レセプターを介したものと考えることができた。 2、シゾンにおけるヘム合成がミトコンドリアで起こることを既に明らかにしている。光照射によるODRの開始にはMAPKカスケードの活性化が必要であるが、暗所でも、MAPKの活性化剤であるアニソマイシンとヘムを共存させるとODRを開始させることが可能であることを見出した。従って、ヘムはODRの活性化に関わる因子の一つであると考えることができる。現在、もうひとつのODR調節因子であるABAの作用と、ヘムの作用との相互関係についての検討を開始している。 3、シゾンにおけるABA合成酵素をコードすると考えられるNCED遺伝子(CMS362C)の破壊株を作成し、低温等のストレス耐性について野生株と比較した結果、30℃における増殖遅延が観察された。また、CMS362C mRNAが低温や強光条件で誘導されることから、ABA合成とストレス応答に関連性が示唆される。ABAレセプターである可能性を考えた2種のCHLH遺伝子については、詳細な比較により片方のみをCHLHと特定した。現在までにペプチド抗体を作製したので、発現について検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の千葉大学から東工大への異動に伴い、やむを得ず実験の滞る期間が数ヶ月あった。また、ABA合成系遺伝子の欠損株の作製の結果、予想よりも少ない効果しかえられておらず、より詳細な表現系の検討が必要と考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
ABAの作用点をNDR活性化と予想していたが、実際にはODR上流であることが示唆されている。従って、ODRの活性化に関わるテトラピロール分子、ヘムの作用機作と関連づけて解析していくことが必要となった。また、ABA受容体に関しても、ChlHというよりは未知の因子である可能性が高くなったことから、これまでのODR開始モデルを考え合わせた検討を進めていく。ストレス応答とDNA合成開始制御に関する関連性についても注視する必要がある。
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