2011 Fiscal Year Annual Research Report
植物の匂い感覚メカニズムの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Environmental sensing of plants: Signal perception, processing and cellular responses |
Project/Area Number |
23120506
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
東原 和成 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (00280925)
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Keywords | 匂い / タバコ / BY-2細胞 / Ca2+ / 遺伝子発現誘導 |
Research Abstract |
植物は動物のような嗅覚受容体や嗅神経系を持たないため、植物がどのように匂い物質を受容し、どのようなメカニズムで応答しているのかは未だほとんど解明されていない。そこで、本研究では、植物の環境感覚の一つである匂い刺激に対する応答の分子メカニズムを明らかにするのを目的とする。タバコ個体にテルペン系の匂い物質である(E)-beta-カリオフィレンを曝露させると遺伝子発現誘導が起こるかq-PCRを用いて定量を行った結果、(E)-beta-カリオフィレンによるosmotin遺伝子発現誘導が起こることを示唆する結果を得た。そこで、osmotinの転写制御領域下でレポーター遺伝子を発現する形質転換タバコ(osmotin::GUS形質転換タバコ)を用いて、タバコ個体において(E)-beta-カリオフィレン刺激によるosmotinの発現誘導が起こる細胞を解析した。しかし、現在のところ明確な誘導は見られていない。匂い刺激に伴う細胞内のカルシウムイオン濃度変化を検出するため、タバコの葉を用いたカルシウムイメージング法の確立を試みた。まず、カルシウム感受性蛍光色素を取り込ませたタバコの葉を用いて、カルシウムイメージングを行った。匂い応答測定に先立ち、細胞内カルシウムイオン濃度の変化が検出可能か検証するため、カルシウムイオノフォアであるA23187やカルシウムキレート剤であるEGTAを投与した。その結果、A23187投与により、細胞内カルシウムイオン濃度のゆるやかな上昇が観察できた。しかし、この方法では液胞にもカルシウム感受性蛍光色素が局在することが多く、細胞質のシグナルを抽出することが困難であった。そこで、GFP由来の蛍光カルシウムセンサーであるG-CaMP2を発現するタバコを作出した。このタバコ個体において、G-CaMP2が細胞質に局在することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
植物としてタバコ、匂いはカリオフィレンを用いて、植物個体レベルで匂いに対する応答を検出するという第一目標は達せられた。カルシウムイメージングは植物研究領域ではチャレンジングな技術なので難航しているが、手法の確立を着実に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、G-CaMP2を発現するタバコを用いて、匂い刺激に対する応答を測定する系を立ち上げ、(E)-beta-カリオフィレン曝露による葉表面の細胞内カルシウムイオン濃度変化の検出を目指す。また、サリチル酸経路やジャスモン酸経路など、既知のシグナル伝達機構と比較解析するための具体的な実験のひとつとして、領域内連携によりNPR1-GFPシロイヌナズナを供与いただき、(E)-beta-カリオフィレン溶液に応答してNPR1の核移行が起きるかどうか検討することを計画している。
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Research Products
(1 results)