2011 Fiscal Year Annual Research Report
細胞場におけるmRNA代謝とタンパク質分解とを統合する環境刺激応答制御機構
Publicly Offered Research
Project Area | Environmental sensing of plants: Signal perception, processing and cellular responses |
Project/Area Number |
23120515
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
柘植 知彦 京都大学, 化学研究所, 助教 (50291076)
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Keywords | 光形態形成 / 紫外線応答 / タンパク質分解制御 / RNA代謝 / COP9シグナロソーム / SAP130 / 花粉形態形成 / 環境応答 |
Research Abstract |
本研究では、植物の環境感覚においてCOP9シグナロソーム(CSN)が「mRNA代謝とタンパク質分解とを統合的に制御する鍵因子である」と考え、細胞の場におけるCSNの刺激応答機構を解明することを目指す。これまでCSNがタンパク質分解系を調節し、植物では光情報伝達下流の形態形成の制御、動物では情報伝達や細胞周期の制御に関与することを報告した。ここではシロイヌナズナを用いてCSNと相互作用するRNA代謝関連因子に注目し、CSNが光をはじめとする環境刺激に応答して情報伝達を制御する分子機構を解明する。該当年度の実績後概要を列記する。 まず、個体におけるSAP130の分子機能を明らかにするために、シロイヌナズナを用いて解析した結果、SAP130は2つの遺伝子にコードされ、これら遺伝子は器官ごとに類似した遺伝子発現様式を示し、プロモーター活性は共に特定時期の葯で高かった。両遺伝子を標的とするRNAi発現抑制植物では、花粉形成過程のmicrospore stageからbicellular stageへの移行期に形態形成異常を示した。この時期は花粉がmRNAを大量に蓄積する時期にあたり、成熟花粉はそのpre-synthesized mRNAを用いて受粉の場で転写を伴わない翻訳を効率的に行なう。また花粉形成異常の原因となる遺伝子ターゲットを探索し、花粉形成期に特異的なQRT1とQRT3の発現がSAP130発現抑制植物で減少することを見出した。 一方、CSN1のN末端領域は重要な機能を担い、シロイヌナズナでは欠損すると致死、動物ではAP-1の転写活性を抑制し、紫外線や飢餓回復の刺激に応答するc-fosの活性化を抑制する。今回、動物培養細胞をモデルに用いて、CSN1Nが紫外線や飢餓回復の刺激に応答するc-Junのリン酸化を抑制し、その上位にあるJNK1の発現を抑制することを解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「CSNと結合するスプライソソーム構成因子の機能」:SAP130はスプライソソーム形成やスプライシングに不可欠だが、その詳細な分子機能は不明である。シロイヌナズナのSAP130は2つの遺伝子にコードされていた。これら遺伝子は器官ごとに類似した遺伝子発現様式を示し、そのプロモーター活性は共に特定時期の葯で高かった。両SAP130の機能重複が示唆されたので、RNAi法を用いて両遺伝子を標的とする発現抑制植物を作製して解析を行なった。その結果SAP130発現抑制植物では、花粉形成過程のmicrospore stageからbicellular stageへの移行期に形態形成異常を示した。この時期は花粉がmRNAを大量に蓄積する時期にあたり、成熟花粉はそのpre-synthesized mRNAを用いて受粉の場で転写を伴わない翻訳を効率的に行なうと考えられている。つぎに花粉形成異常の原因となる遺伝子ターゲットを探索し、花粉形成期に特異的なQRT1とQRT3の発現がSAP130発現抑制植物で減少することを見出した。この成果は原著論文[Plant Cell Physiol, 52: 1330-9 (2011)]に報告した。 「CSNが内包するCSN1の遺伝子転写抑制機能」: CSN1のアミノ末端領域(CSN1N)は重要な機能を担っており、シロイヌナズナにおいてCSN1Nが欠損すると致死となり、動物においてはCSN1NがAP-1の転写活性を抑制し、紫外線や飢餓回復の刺激に応答するc-fosの活性化を抑制することが先行研究より判明している。今回、動物培養細胞をモデルに用いて、CSN1Nが紫外線や飢餓回復の刺激に応答するc-Junのリン酸化を抑制し、その上位にあるJNK1の発現を抑制することを解明した。この成果は原著論文[Protein Cell, 2: 423-32 (2011)]に報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、CSNとSAP130との相互作用が植物の環境刺激応答に担う機能の解明を目指す。まずcsn1機能欠損変異体にCSN1を発現した部分相補植物が、SAP130機能抑制植物同様に低い稔性を示すことに注目し、花粉形成に着目した詳細な解析を行なう。また、CSNとSAP130の機能抑制植物がともに多量のアントシアニンを蓄積する形質を示すことに着目し、光刺激応答時のCSNとSAP130の機能解析を行なう。 さらに、CSN1やSAP130の発現様式を改変した植物を用いて、SAP130とその類似遺伝子群の機能解析、CSN1やSAP130の標的因子解析を行ない、環境刺激に応答する植物細胞の分子機構を解明する。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] D-myo-inositol-3-phosphate plays an essential role in auxin-regulated embryogenesis by affecting phosphatidylinositol-mediated endomembrane function in Arabidopsis.2011
Author(s)
Luo Y, Qin G, Zhang J, Liang Y, Song Y, Zhao M, Tsuge T, Aoyama T, Liu J, Gu H, Qu LJ.
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Journal Title
Plant Cell
Volume: 23
Pages: 1352-1372
DOI
Peer Reviewed
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