2011 Fiscal Year Annual Research Report
挑戦的な変異体スクリーニング法によるフィトクロムBのN末端領域の下流因子同定
Publicly Offered Research
Project Area | Environmental sensing of plants: Signal perception, processing and cellular responses |
Project/Area Number |
23120522
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松下 智直 九州大学, 大学院・農学研究院, 特任准教授 (20464399)
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Keywords | フィトクロム / 植物 / 光受容体 / シグナル伝達 / 変異体スクリーニング / 環境応答 |
Research Abstract |
1.「Transcriptional gene silencing(TGS)を簡便かつ完全に抑制する方法の開発」:我々は、phyB N末端領域の新奇下流因子を同定するために、phyB N末端領域の過剰発現体を親株としてT-DNAタギングにより変異導入し、変異体スクリーニングによる順遺伝学的解析を行うことを試みた。しかしその際、形質転換植物において複数の外来遺伝子がプロモーター領域間の相同性により不活性化される現象であるTGSが起こり、これによって親株でのphyB N末端領域の発現量が低下し、変異体スクリーニングを行えなくなるということが分かった。そこで我々は今年度、TGSを簡便かつ完全に抑える技術を開発した。まず、過去の報告通り、導入する2つの外来遺伝子に対して異なるプロモーターを用いることでTGSが抑えられることを確認した。本研究ではさらに、2つの外来遺伝子の間で、ターミネーター配列や、T-DNA内の配列の相対的な向き変えることによっても、TGSが抑えられることを見出した。これらの技術を全て組み合わせることで、50,000個体以上のT1植物において完全にTGSが抑えられることを示した。 2.「非共有結合により取り込んだ発色団によるphyBシグナル伝達」:フィトクロムの発色団結合部位であるシステイン残基を他のアミノ酸に置換すると、フィトクロムの生理活性が完全に失われることから、これまで発色団との共有結合がフィトクロムの働きに不可欠であると考えられてきた。しかし我々は今年度、シロイヌナズナのphyBが、共有結合を介さずに発色団を取り込みうること、そして非共有結合により取り込んだ発色団を用いてシグナルを伝達しうることを、in vivoにおいて明確に示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書にて、本年度の計画の第一として、順遺伝学を進める上での最大の障壁である、遺伝子機能冗長性の問題を克服するための挑戦的な変異体スクリーニング系を確立し、T-DNAタギング系統の作製を進めることを掲げた。そして実際に今年度、過剰発現体にT-DNAタギングする際に起こるTGSを完全に抑える技術を確立し、約50,000系統のT-DNAタギング系統を作製することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度確立したTGS抑制技術により作製した50,000系統以上のT-DNAタギング系統を用いて、変異体スクリーニングを精力的に行う。また、本TGS抑制技術が本領域内の他研究課題へ応用されることが大いに期待される。
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Research Products
(12 results)