2011 Fiscal Year Annual Research Report
光屈性の生態学的機能を支える分子機構
Publicly Offered Research
Project Area | Environmental sensing of plants: Signal perception, processing and cellular responses |
Project/Area Number |
23120524
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
飯野 盛利 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 教授 (50176054)
|
Keywords | 環境 / シグナル伝達 / 植物 / 生理学 / 光生物学 |
Research Abstract |
シロイヌナズナ胚軸とイネ幼葉鞘を用いたこれまでの研究により、光屈性の光量反応曲線は多相的で複数の光化学的反応の関与が示唆されるが、その全てがphot1を光受容体としNPH3/CPT1を必須なシグナル因子とするシグナル伝達系に基づくことを明らかにした。また、幼葉鞘の先端特異的な光屈性に関与する新規遺伝子CPT2を同定した。これらの研究を発展させ、本年度は次の成果を得た。(1)シロイヌナズナPKS欠損突然変異体(ホモログの二重・三重突然変異体)を用いて、多相的な光量反応曲線上の全ての反応はPKSに依存することを明らかにした。(2)これまで光量反応曲線の多相性を広帯域(broad band)青色光源を用いて明らかにしたが、3波長(384nm、449nm、489nm)の狭帯(narrow band)LEDを光源にすると、パルス照射で求められる光量反応曲線の形状は単純化することが明らかになった。広帯域青色光では10^<1.5>μmolm^<-2>付近の主要なピークに加え、その低光量側と高光量側にもピークが観測されていたが、狭帯LED光では、少なくとも低光量側のピークが消失した。この原因を解明する目的で2波長同時照射の実験を行ったところ、低光量側のピークの出現には青色光と近紫外光の同時照射が必要であることが判明した。この発見は、phot1を光受容体とする光化学反応・シグナル伝達を解明するにあたって、重要な手掛かりになると思われる。(3)イネCPT2遺伝子の機能を明らかにする目的で、CPT2cDNA(ORF全長もしくは葉緑体移行シグナル領域のみ)とsGFPとの融合遺伝子を構築し、cpt突然変異体に導入した形質転換体の作製を試みている。今後、この形質転換体を用いて、遺伝子産物はその配列が示唆するように葉緑体タンパク質として機能しているかどうかを明らかにしていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多相的な光量反応曲線上の反応は全て、phot1、NPH3/CPT1に加え、PKSにも依存していること、多相性の少なくとも一部は、青色光と近紫外光の同時照射が必要なことなど、今後の分子生物学的反応の解析に必要な基礎的で重要な知見が得られた点を評価した。一方、CPT2遺伝子機能解析の研究は、形質転換体の作製にてこずり、進展が遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
単一種の光受容体とシグナル因子により制御される光屈性の光量反応曲線がどうして多相的であるかを更に追究していく。具体的には、多相性の発現にどうして青色光と近紫外光の同時照射が必要であるかをイネ幼葉鞘を用いて生理学的・光化学的手法により解析し、多相性の発現に係るphot1分子内の領域、あるいはシグナル因子をシロイヌナズナを用いて分子遺伝学的手法により解析する。次に、幼葉鞘先端特異的な光屈性に関与するCPT2の機能を明らかにする研究を進展させる。特に、遺伝子配列が示唆するように、CPT2は葉緑体で機能するタンパク質であるかを明らかにする。
|