2011 Fiscal Year Annual Research Report
冷温帯林におけるエアロゾル動態把握及び樹木の応答機構
Publicly Offered Research
Project Area | Impacts of aerosols in East Asia on plants and human health |
Project/Area Number |
23120701
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渡邊 陽子 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 学術研究員 (30532452)
|
Keywords | エアロゾル / 冷温帯林 / シラカンバ / フィルターパック法 / SEM-EDX |
Research Abstract |
本研究の目的は、越境大気汚染物質であるエアロゾル粒子の冷温帯林への沈着量を推定し、さらに樹木の葉面に付着したエアロゾル粒子の動態を分析することにより、エアロゾルの植物影響を明らかにすることである。本研究では、地域内の排出源がほとんど存在せず、越境大気汚染が検出しやすい北海道において、エアロゾル濃度の異なると考えられる地域を選択し、各地域における沈着量を推定するためのエアロゾル粒子の採取・分析を行ない、各地域に生育する樹木葉の表面観察を行なう。最終的にはエアロゾル沈着量推定のためのモデルを構築する。本年度は、北海道東部の摩周湖外輪山において、年間を通して、フィルターパック法によるエアロゾル粒子の採取、霧水サンプラーによる霧水採取を行なった。採取したエアロゾル粒子や霧水には、硫酸塩やアンモニウムイオンが多く含まれていることが明らかとなった。また、エアロゾル粒子や霧水に含まれる各イオン濃度は、春から秋にかけて高いという季節変動が示された。さらに、植生への霧水沈着を考慮したWRF改良モデルから算出したLiquid water content(LWC)と摩周湖外輪山に設置された視程計によるデータが比較的良く一致したことから、このモデルにより、沈着量推定に必要なパラメータであるLWCが再現可能であることが示唆された。樹木葉面に付着したエアロゾル粒子の動態については、野外では雨や霧でエアロゾル粒子が洗浄される可能性が高いと考えられるため、雨や物理的な影響をシミュレートした洗浄実験および拭取り実験を行なった。エアロゾル濃度の高い都市中心部のシラカンバの葉を採取し、各処理後に葉の表面の粒子のSEM-EDX分析を行なった結果、未処理葉の表面に付着していた土壌粒子やSイオンが各処理により除去されていることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エアロゾル粒子の沈着量推定に必要なデータ採取や、パラメータ算出が順調に進んでいる。また、葉の表面に付着したエアロゾル粒子の挙動に関しても分析を行なうことが出来た。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も、エアロゾル粒子や霧水の採取及び分析を行ない、沈着量の推定のためのパラメータを算出する。必要であれば、粒径分布などの詳細な測定を行なう。また、野外での葉面の粒子の動態を明らかにするために、降雨や霧の影響を受けた葉の観察・分析を行なう。最終的に、エアロゾルの植物影響を考慮した、沈着量のモデルを構築する。
|
Research Products
(3 results)