2011 Fiscal Year Annual Research Report
疫学研究へのデータ提供を指向した東アジアの包括的エアロゾル成分解析とリスク評価
Publicly Offered Research
Project Area | Impacts of aerosols in East Asia on plants and human health |
Project/Area Number |
23120707
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
奥田 知明 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (30348809)
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Keywords | 環境質定量化・予測 / 環境分析 / 大気汚染防止・浄化 / 疫学 / 有害化学物質 / 大気微小粒子 / リスク評価 / エアロゾル |
Research Abstract |
疫学研究へ適用可能な、三次元偏光光学系蛍光X線分析法(EDXRF)によるエアロゾル中金属成分の非破壊・迅速測定方法の検討を行った。フィルター材質や二次ターゲット等様々な検討を行い、測定時間15分として分析条件を決定した。決定された条件において、ポリカーボネートフィルター上にPM2.5粒子を塗布した標準試料(NIST SRM2783)を分析し、EDXRFによる測定値と保証値(参考値含む)とを比較した。K,Ca,Ti,Cr,Fe,Cu,Znについては両者は良好に一致した。Al,Si,S,Mn,Ni,PbについてはEDXRF測定値がやや過大になったものの、その繰り返し精度が良好だったことから、この比を用いて測定値を補正可能であると思われる。Vについては、SRM上の存在量が少なかったためにばらつきが生じたと考えられる。 次に実試料として、中国北京市でニトロセルロースフィルター上に採取されたTSPとPM2.5についてEDXRF分析を行い、その後同一試料を酸分解/ICP-MS法により分析しその結果の比較を行った。その結果、KからPbまでのほとんどの元素について両者は近い値を示した。またその繰り返し精度も良好だったことから、必要に応じて分析値を補正することも可能と言える。Al,Ni,SrについてはEDXRFが過大となりまたばらつきも大きく、定量性の向上に向けさらに検討が必要であることが判った。 NIST SRM2783と中国北京市エアロゾル試料の分析結果を比較すると、両者でクロスチェックの結果が元素ごとに多少異なっていた。これは、フィルターを含めた試料の全体的な化学組成すなわちマトリックスが両者で異なっているためと考えられる。従って、実環境試料を分析するにあたっては、マトリックスの影響に注意する必要があることが判った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した通り、日本・横浜市(慶應義塾大学)、中国・北京市(清華大学・中国科学院)、およびインドネシア・ジョグジャカルタ市(ガジャマダ大学)においてエアロゾルの採取を行い、化学分析も順調に進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き東アジアにおける複数の都市で採取されたエアロゾルの化学分析を進め、リスク評価や疫学研究に提供し得るデータセットを得る。得られたデータを用いて個々の化学成分のリスクを積み上げる形でエアロゾルの健康リスクを計算しリスク評価を行う。また得られた結果を当該領域の他班の結果と照合し、大気環境モデルや疫学研究へ観測データを提供する。
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Research Products
(2 results)