2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヘムをシグナリング分子とする情報伝達システムの構造化学的基盤
Publicly Offered Research
Project Area | Structural basis of cell-signalling complexes mediating signal perception, transduction and responses |
Project/Area Number |
23121501
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石森 浩一郎 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (20192487)
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Keywords | ヘム / シグナル伝達 / 鉄代謝 / 転写因子 / 翻訳制御 |
Research Abstract |
本年度得られた研究成果の概要は以下のとおりである. 1.制御系を構築する各蛋白質の単離と精製および安定同位体化 平成24年度に実施する構造解析的手法に耐えるだけの量と純度を確保できうる精製法の確立を試みた.Irr制御系については,Irr,フェロキラターゼ(FC)の精製法の確立が完了し,これらの蛋白質の安定同位体化についても予備的な実験が完了したため,平成24年度の測定に向けて準備は整っていると考えられる.IRP制御系では,IRP1,IRP2について,高純度の蛋白質を安定して精製できる手順が確立し,その相互作用蛋白質であるFBXL-5についても予備的な検討が終了した. 2.制御蛋白質複合休の構造解析のための予備的検討 Irrにおける標的DNAに対する親和性を明らかにするため,蛍光ラベルした標的DNAを用いて,そのIrr結合による蛍光の偏光解消を追跡した.その結果,Irrの標的DNAに対する親和性は,これまでゲルシフトアッセイ法で示唆されていた親和性よりもはるかに弱く,Irr-標的DNA複合体を安定に形成させるには,Irrに対して,これまで想定されてよりも多くの標的DNAを存在させる必要があることが示された。一方,IRP制御系については,連携研究者の鳥取大学永野教授のもとで,IRP1を用いて結晶作成の予備的な条件検討が行われ,IRP1は蛋白質精製後,経時的に構造が不安定化し,次第に凝集を起こすことが明らかになった.このことは,蛋白質精製後直ちに結晶化条件のスクリーニングを行う必要があることを意味している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験項目1については,本研究課題の主要蛋白質であるIrr,IRPのいずれに対しても高純度の蛋白質を再現性よく得ることに成功し,その相互作用蛋白質についても精製法を確立,あるいは確立に目途がついた状態である。実験項目2については,当初予定した予備的検討はほぼ完了したと考えられ,平成24年度に本格的な実験が開始できる状況である,
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には今後も当初の予定通り遂行できると想定しているが,当初の想定とは異なる結果や解決すべき点も明らかになってきた.Irrの標的DNAに対する親和性が当初想定したよりは低いことについては,標的DNAの相対比を高くした条件下での測定を行う必要があると考えられる.また,比較的安定性が高いと考えられたIRP1が経時的に凝集する点は,今後問題になる可能性もあるが,蛋白質の精製と結晶化条件のスクリーニング開始までの時間を短縮することにより克服できると考えられる.
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