2011 Fiscal Year Annual Research Report
GPCRのシグナル伝達機構の構造生物学的解明
Publicly Offered Research
Project Area | Structural basis of cell-signalling complexes mediating signal perception, transduction and responses |
Project/Area Number |
23121511
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上田 卓見 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助教 (20451859)
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Keywords | NMR / GPCR / 膜タンパク質 / ケモカイン受容体 / オピオイド受容体 / アドレナリン受容体 / 転移交差飽和法 / CCR1 |
Research Abstract |
SF-9昆虫細胞にCCR1を大量発現させた上で、膜画分を密度勾配遠心により精製した。CCR1をDDMで可溶化した上で、その直後にMSP1E3を使ってrHDL、に再構成した。得られたrHDLを、His-tagおよび1D4カラムで精製した。得られたCCR1の純度は80%以上、収量は40ugであった。 得られたCCR1-rHDLに対して、Gタンパク質とMIP-1αのmonomeric mutantであるP8A/F13Y/E67Qを添加した試料を用いて、GDP-GTP交換アッセイを行った。その結果、MIP-1α濃度依存的にCCR1-rHDLに対する蛍光標識GTP結合量が増大した。したがって、CCR1-rHDLがシグナル伝達活性を保持することが示された。さらに、MIP-1α変異体とCCR1-rHDLの相互作用をSPRで調べた結果、解離定数が約2uMと算出された。 次に、アミドプロトン検出型のTCS実験を行った。その結果、L3,A10,C11,C12,T16,F24,Y28,S32,Q34,I41,F42,S47,Q49,V50,C51にラジオ波照射に伴う有意な強度減少が観測された。本実験により得られたCCR1との結合界面と、CCR5との結合界面を比較すると、Q49の近傍は、両方の結合界面に含まれるのに対し、Q30を中心とした領域、およびV59を中心とした領域は、それぞれCCR1,CCR5との結合界面にのみ含まれていた。 MIP-1αについて、E57やV63のSNPsが報告されている。これらの残基は、今回の研究で、CCR5特異的な結合部位に存在することが分かった。これらのSNPsが多発性硬化症の症状に与える影響を調べることにより、CCR5とMIP-1αの相互作用が病気の進行に果たす役割について、手掛かりが得られると考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
CCR1に関しては、当初の計画通り、試料調製法を確立した上で、TCS実験によりCCR1上のMIP-1□結合界面の同定に成功した。また、アドレナリン□2受容体に生じる構造変化をNMR解析する方法も確立した。これらに加えて、ヒト□オピオイド受容体についても、rHDL中の脂質二重膜に再構成する方法を確立し、SPR解析によりリガンド結合活性を保持していることを確認できた。今後、ヒト□オピオイド受容体の活性化に伴う構造変化もNMR解析することにより、オピオイドの薬理作用に関する重要な手掛かりが得られると考えている。以上より、当初の計画より進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)CCR1やオピオイド受容体のNMR解析条件の確立 CCR1やオピオイド受容体について、NMR解析に十分な純度、濃度、安定性の試料が調製できるようにする。活性を確認しながら、N末端やC末端の切除や熱安定変異の導入を行うことにより、収量や安定性の向上を試みる。また、リガンドアフィニティークロマトグラフィーにより、活性体のみを単離する方法も確立する。さらに、安定性が不十分な場合は、reconstituted high density lipoprotein(rHDL)中の脂質二重膜に再構成することも検討する。 (2)膜貫通領域のシグナルの観測および帰属 CCR1やオピオイド受容体について、膜貫通領域に存在するメチオニン残基のメチル基を選択的に13C標識した標識体を作製して、NMRシグナルの観測を試みる。観測できたら、変異体による帰属を行う。特に、リガンド結合部位近傍や、活性化に伴い大きく構造変化すると考えられるTM5,6の帰属を試みる。 次に、アゴニスト結合時、アンタゴニスト結合時、非結合時のシグナルを比較することにより、活性化に伴う構造変化を検出する。さらに、NOEの検出や、13C核の化学シフトに基いて、構造変化の様式の手掛かりを得る。また、シグナルに多型が観測された場合は、機能と無関係な不均一性に由来するものでないことを十分確認した上で、線形解析やZZ-exchangeにより、量比や交換速度を決定する。 以上の結果に基いて、細胞外領域へのアゴニストの結合により、CCR1やオピオイドの細胞内領域に生じる構造変化の様式および機構、ならびにG蛋白質やアレスチン等の細胞内エフェクター分子の活性制御の機構を考察する。
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