2011 Fiscal Year Annual Research Report
無脊椎動物ロドプシンの光活性化機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Structural basis of cell-signalling complexes mediating signal perception, transduction and responses |
Project/Area Number |
23121513
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
村上 緑 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20324387)
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Keywords | 生物物理 |
Research Abstract |
ロドプシンは眼の網膜に存在する光受容膜タンパク質で、7本膜貫通へリックス構造のタンパク質部分オプシンと発色団レチナールからなる複合体タンパク質である。申請者らはスルメイカのロドプシンについて暗順応状態、および光反応初期中間体である全トランス型バソ中間体、9-cis 型イソロドプシンの構造解析に成功し、活性部位でイカロドプシンに固有なアミノ酸残基群とレチナールとの相互作用が光異性化反応の量子収率や反応速度に直接影響を及ぼすことを見出した。本申請課題ではこれをさらに発展させ、イカロドプシンの光活性化にともなう構造変化を追跡し、オプシン-レチナールの相互作用変化および他の信号伝達分子との相互作用様式を明らかにすることを目指した。 イカロドプシン結晶に対し100Kでさまざまな光を照射するとバソ中間体、暗順応状態、イソロドプシンの3状態の平衡が生成し、青色光照射によりバソ中間体へと平衡が移動した。そのまま暗条件下で170Kに昇温するとバソ中間体からルミ中間体へと完全に遷移した。暗順応状態、バソ中間体、イソロドプシンの各吸収曲線からルミ中間体の吸収曲線を計算し、ルミ中間体の生成率を約50%と見積もった。昇温後の結晶を用いて回折データセットを収集し、イソロドプシンのデータと比較すると、差電子密度マップにおいてレチナール近傍に正負の電子密度分布が観察された。これに基づいて2.8 Å分解能でルミ中間体の構造モデルを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光の波長と温度を調整することで結晶中での光反応を制御し、顕微分光測定により平衡状態での各反応中間体の生成率を精度良く見積もりモデルを構築することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の2点を重点的に実施する。1)昨年度までに得られたデータをまとめ論文を執筆する。2)イカ網膜から全長ロドプシンの高純度精製およびこれを試料とした結晶化を行い、高分解能構造解析可能な良質な結晶を得る。
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Research Products
(12 results)