2011 Fiscal Year Annual Research Report
分子量約1000万の巨大粒子ボルトの脂質ラフト認識機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Structural basis of cell-signalling complexes mediating signal perception, transduction and responses |
Project/Area Number |
23121517
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 秀明 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教 (40346169)
|
Keywords | X線結晶構造解析 / 生体超分子複合体 / 核酸-タンパク質複合体 / vault / 自然免疫反応 / 脂質ラフト |
Research Abstract |
1986年に米国UCLAのL.H.Romeらのグループによってラット肝臓より単離されたボルト(Vault)は3種類の蛋白質と1種類のRNAによって構成されており、分子量約1000万でサイズが約40nmx67nmという今日までに報告されている中では最大のRNA-蛋白質複合体である。粒子の発見から20年以上もの間、多くの研究者らにより核-細胞質間物質輸送や多剤耐性への関与など様々な可能性が探られてきたが、2007年、ハーバード大学の研究グループにより自然免疫反応への関与が示された(M.P Kowalski et.al.,Science 317,130-132(2007))。我々は2008年にVault粒子外殻の全体構造を3.5A分解能で決定することに成功し、構造情報からボルトが脂質ラフトに結合する可能性を示した。この結果は、Kowalskiらの報告を強く支持するものであった。 本研究では、ボルト外殻を構成するMVP(Major Vault Protein)のショルダードメインがどのようにして脂質ラフトを認識するのかをX線結晶構造解析により原子レベルで明らかにするためにコレステロール誘導体との複合体結晶の作成を目指している。また、MVPのみで構成されるボルト粒子を高分解能で構造決定し、主鎖だけでなく側鎖の配向も正確に決定することで、本粒子の機能解明におけるさらなるブレイクスルーとする。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ボルトの脂質ラフト認識機構の解明を主な目的としている。そのためには、コレステロール誘導体との複合体の構造決定を目指すと共に、MVPのみで構成される粒子の高分解能構造決定もあわせて行う必要がある。現時点で、コレステロール誘導体との複合体の構造決定は出来ていないが、MVPのみで構成されるボルト粒子の2.8A分解能の回折点を示す結晶を得る事に成功しており、比較的早い時期に高分解能で構造決定できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、結晶凍結条件や回折実験条件の最適化を行い、再現性よく2.8A分解能以上の高分解能回折強度データを収集できるようにする。長軸方向で1.5mm以上ある非常に大きな結晶であるため、凍結剤の浸透条件を最適化するととが困難であるが、浸透の際に使用する容器の形状を変えるなどして均一に浸透する条件を確立する。また、引き続き、コレステロール誘導体との複合体の構造決定を目指した研究も進める。
|