Research Abstract |
生殖細胞は次世代に遺伝情報を伝え,種の保存を実現する唯一の細胞であり,次の世代をつくる全能性を有する.生殖細胞の前駆細胞である始原生殖細胞の形成と維持にはNanosとPumilioが必要である.NanosとPumilioは,高等真核生物で保存されたRNA結合タンパク質であり,mRNAの3'非翻訳領域に結合し,標的mRNAの翻訳を抑制する.しかし,その制御機構は不明であり,Nanos/Pumilio/mRNA複合体の原子レベルでの立体構造解析が求められている.本研究は,生殖細胞の基になる始原生殖細胞の形成と維持に必要なmRNAの翻訳制御因子,NanosとPumilioの構造生物学的研究であり,それらが機能している現場である複合体のX線結晶構造解析を目指す.平成23年度は,Pumiilioの調製と結晶化,Nanos-RNA複合体の調製と結晶化,三者複合体の調製を行った. 【Pumilioの結晶化】PumilioのC末端ドメイン(PumCTD)を大腸菌を用いて発現させ,精製を行ったところ,特異的な分解が見られた.そこで2次構造予測に基づき,ゼブラフィッシュ特有のループを欠失させたところ分解しないPumCTDを精製できた.これを用いて結晶化スクリーニングを行ったところ,硫酸塩を沈殿剤として用いた場合に結晶を得ることに成功した. 【Nanos-RNA複合体の結晶化】NanosのC末端ドメイン(NosCTD)とRNA複合体の結晶構造解析を目指し,試料調製を行った.長さの異なるRNA(6-mer,10-mer,20-mer)とNanosを混合し,ゲル濾過によって複合体の形成を調べたところ,10-merのRNAを用いた場合に複合体の形成を確認できた.そこで,このRNAを用いてNosCTD-RNA複合体の結晶化を行ったところ,PEGを沈殿剤として用いた場合に結晶を得ることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
PumCTD,NosCTD-RNA複合体の結晶化に成功したが,現時点ではX線結晶構造解析を行える品質の結晶では無い.今後は結晶化条件およびクライオ条件の最適化を行い,構造解析可能な結晶を得る. PumCTD-NosCTD-RNA三者複合体に関して,10-merのRNAを用い,NosCTD-RNA複合体にPumCTDを添加すると,PumCTD-RNA複合体が形成されるが,三者複合体の形成は確認できなかった.今後はRNAの配列や長さの検討を行う必要があると考えられる.
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