2011 Fiscal Year Annual Research Report
神経活動に伴う血流調節の生後発達過程とアストロサイト
Publicly Offered Research
Project Area | Vasculo-neural wiring and their interdependent crosstalk |
Project/Area Number |
23122513
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
森田 光洋 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (50297602)
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Keywords | 脳血流 / アストロサイト / 神経活動 / シナプス / アラキドン酸 / 血管新生 / 炎症 / てんかん |
Research Abstract |
脳血流は、神経活動に伴うアストロサイトの細胞内カルシウム上昇と、これに引き続く血管調節因子の産生によって制御されている(Neurovascular coupling; NVC)。生後発達過程においてNVCがどのように形成されるかを明らかにする目的で、ラット脳スライス標本を用いた生理学的検討を行った。結果として、予想外だが非常に興味深い知見が得られた。生後2~3週間のアストロサイトは、神経活動や薬理学的な神経伝達物質(グルタミン酸)受容体活性化に応答して、細胞内カルシウムを上昇させ、近傍の血管を弛緩させた。これに対し、生後3週間以降では、ATPなどがアストロサイトの細胞内カルシウム上昇を引き起こすものの、神経活動や神経伝達物質に対するアストロサイトのカルシウム上昇、及び血管の応答性が失われた。さらに、アストロサイトから選択的に回収したRNAを用いた解析において、同時期に代謝型グルタミン酸受容体遺伝子の発現が顕著に減少することが見出された。一方、多光子顕微鏡を用いたin vivoにおけるNVCに関する報告では、3週目以降のげっ歯類においても、依然としてアストロサイトのカルシウム上昇がNVCの主要経路であることが示されている。これらのことから、従来考えられていたアストロサイトの代謝型グルタミン酸受容体を介したNVC発現の機序は発達段階の一時的なもので、アダルトでは未知の機序にアストロサイトがNVCを引き起こしていると示唆される。また、スライスを用いたアプローチが、アダルトに置けるNVC研究において必ずしも有効ではないことが明らかとなった。現在、「12.今後の研究の推進方策」で述べるように、in vivoにおける実験系の構築を進め、スライスにおいて得られたデータとの比較検討を行う準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予想とは大きく異なった形であるが、発達段階のNVC 形成過程に関する新たな知見を得ることができた。これまで知られていなかったアダルトにおけるNVCの実体が、この知見に基づいて解明される可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従い、次年度は、生後発達過程におけるNVC形成が、神経活動や脳の炎症によってどのような影響を受けるかを解明する。脳スライスを用いた実験系が、アダルトにおけるNVC研究に適していないことが明らかになったため、実験系の変更を行う。具体的には、マウスのバレル野(ヒゲ刺激に対する感覚野)を用いる。感覚刺激に対する血流の変化をレーザースペックルイメージングで測定する系をすでに砲立しており、これを用いて、ヒゲの切除による神経活動の抑制が、血流調節にどのような影響を与えるかなどを検討する。変化が見られた場合、スライスを作成し、アストロサイトの生理学的変化を検討する予定である。
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Research Products
(2 results)