2011 Fiscal Year Annual Research Report
Slit-Roboシグナルによる血管網形成の制御機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Vasculo-neural wiring and their interdependent crosstalk |
Project/Area Number |
23122515
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山崎 大輔 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (50422415)
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Keywords | シグナル伝達 |
Research Abstract |
血管のネットワーク構造は既存の血管から新しい血管が出芽し枝分かれを形成することにより構築されるが、枝分れがいつどこで起こるのか、また枝分かれした血管がどの方向に伸長するのか、といった血管網パターニングに関する疑問は未解決である。血管網と神経回路の二つのネットワークが全身を通して並んで走っていること、そして軸索の伸長方向を決定するガイダンス因子が血管内皮細胞にも作用することから、最近両者のパターニングが共通した機構により制御されているという仮説が提唱されている。申請者は血管内皮細胞の運動制御機構を解析する過程で、軸索ガイダンス因子のひとつSlit-Roboシグナルの下流で働くsrGAPが血管網形成における血管内皮細胞の形態変化の制御に関与していることを見出した。 Slit-Roboシグナルは血管網形成に重要であることが報告されているが、血管ネットワーク構築のどの過程で、どの細胞に、どのような作用を引き起こすのかは不明である。そこで本年度ではSlit-Roboシグナルが血管網のパターニングを制御する仕組みを理解することを目的とし、srGAP1の機能解析を行なった。 srGAP1の細胞内局在を調べたところ、運動する細胞の先端に形成される膜突起構造に限局していることが明らかになった。各種変異体の作製およびその解析からsrGAP1はそのN末端に存在する膜脂質結合する性質を有するF-BARドメインを介して膜へと運ばれていることが明らかになった。srGAP1の発現をRNAi法により抑制することによりsrGAP1の機能を解析したところ、srGAP1は運動先端の膜突起形成をGAP1活性依存的に負に制御していることが明らかになった。またsrGAP1の発現を抑制した細胞では細胞がもつ運動の方向性や速度が変化した。以上のことからsrGAP1は膜突起形成を介して細胞運動を制御していることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的であるSlit-Roboシグナルの役割を検討するにあたって、細胞内でどのようなエフェクター分子が働いているのかを同定することはきわめて重要である。本年度ではsrGAP1の生理的機能の解析から、srGAP1が細胞運動の制御に重要な役割を果たしていることが明らかになった。細胞運動は血管や神経のネットワーク構造の形成において必須の過程であり、srGAP1の機能同定は今後の研究の基盤となるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
血管網形成におけるSlit-Roboシグナルの役割を明らかにするため、血管内皮細胞におけるSlit-Roboシグナルのエフェクター分子の同定およびその機能解析を行う。血管内皮細胞に発現するRobo1およびRobo4の細胞内領域に結合する分子をプロテオミクス的手法で解析することにより、エフェクター分子を同定する。同定した分子の機能解析は、(1)Roboとの結合の再確認、(2)血管内皮細胞の機能への影響の検討、(3)リガンド分子の同定、(4)血管分枝構造における発現部位の同定、(5)VEGF、Notchシグナルとのクロストークの検討、の順で進めていく。また血管網形成時の血管内皮細胞の形態変化におけるsrGAPの役割およびその活性調節機構を検討する。
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