2011 Fiscal Year Annual Research Report
網膜における血管-神経相互依存性の分子機構と加齢・糖尿病による影響
Publicly Offered Research
Project Area | Vasculo-neural wiring and their interdependent crosstalk |
Project/Area Number |
23122517
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
中原 努 北里大学, 薬学部, 准教授 (10296519)
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Keywords | 薬理学 / 血管生物学 / 網膜血管 / 神経節細胞 |
Research Abstract |
本研究は、「網膜における血管-神経相互依存性の分子機構とそれに及ぼす加齢と糖尿病の影響」について明らかにし、後天性失明や視力低下の原因として大きな割合を占める緑内障と糖尿病網膜症の網膜循環正常化に基づく新規予防・治療戦略を提案することを最終的な目的としている。本年度は、次のような成果を得た。 1.成熟期(8週齢)ラットの眼内にN-methyl-D-asparate(NMDA)を投与すると、網膜神経節細胞が脱落し、次いで網膜毛細血管内皮細胞が脱落するが、PI3K阻害薬であるウオルトマニンでは、網膜毛細血管内皮細胞の脱落が網膜神経節細胞の脱落に先行することが明らかになった。このことは、網膜神経細胞と網膜血管内皮細胞が両者の生存のために相互作用をしていることを示唆しているものと考えられた。 2.申請者らがこれまでに網膜循環改善作用を有することを明らかにしているCL316243(β3-アドレナリン受容体刺激薬)に成熟期ラットのNMDA誘発網膜神経細胞傷害を抑制する作用があることが見出され、β3-アドレナリン受容体の刺激を介する網膜血流量の増加が網膜神経の生存を促している可能性が示唆された。 3.Transforming growth factor-β(TGF-β)阻害薬を用いた検討により、TGF-βシグナルの増強が成熟期ラットにおけるNMDA誘発の網膜神経細胞と血管内皮細胞の傷害に関与していることが示唆された。 4.本年度後半より幼若期(4週齢)ラットを用いた検討を開始しNMDAとウオルトマニンの網膜神経と網膜血管に対する作用について基礎データを蓄積した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
網膜における血管-神経相互依存性の分子機構としてVEGFに加えてTGF-βの関与の可能性を示唆することができた点、今まで明らかにしてきた「神経細胞が血管細胞に与える影響」に加え「血管細胞が神経細胞に与える影響」についても具体例を示すことができた点、さらに、加齢と糖尿病の影響を検討するための基礎データを蓄積することができた点から、おおむね順調に進展していると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
網膜における血管-神経相互依存性の分子機構については、これまで通り成熟期ラットを用いての解析を継続する。加齢の影響については、先ず幼若期ラットと成熟期ラットとの比較を行い、そこで得られた興味深い知見に絞り老齢期ラットでの検討を行う。成熟期ラットを用いて得られる分子機構に関する新知見については、幼若期ラットにおいても直ちに検証する。このように、分子機構の解析とそれに対する加齢の影響の検討を連動させることでより効率的に研究を推進できるものと考えられる。
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